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七瀬中町の住人で、うどんの「もりたけ」さんを知らない人がいたらモグリでしょう。もっとも昨年よりこの角地は薬膳うどんの店になってしまい、あの懐かしいうどん屋さんは記憶の奥底にたたずむのみです。 「もりたけ」の看板の「た」は変体仮名の「た(多)」でありましたので一見すると「ぬ」にも見え、私はわざと「もりぬけ」と読んだりしていたものです。 一言でいえば、のれんをくぐった瞬間に30年前にタイムスリップしてしまったようなお店でした。どう見ても30年以上は使っているパイプ椅子とパイプテーブルは例外なくゆがんでいるので、これまたゆがんだコンクリート床とそりが合わず、3点支持状態で微妙にぐらついていました。 お年寄り夫婦で肩肘張らずにコツコツとやってますといった風情で、素材にこだわるとか、料理の技にこだわるとか、味がどうだとか、接客マナーがどうのとか、健康志向だとか、安全志向だとか、本物志向だとか、器がどうだとか、巷の飲食店が競って声高に叫ぶ様々な"こだわり"は潔いほど全くありませんでした。 とびきり美味しいというわけではありませんが、よく食べに行っていました。いつも込み合っていて、必ずといってよいほど相席になるのです。 現代では、人との対応にもなんだかんだと"意識づけ"が必要なようです。また、口に入れる物の素性をいちいち吟味しなければ安全もままならないようです。しかし、自然体で生活し、それで充分幸せだった時代がたしかにあったのです。 さて、今ここに建つ薬膳うどん屋さんは、これはこれで美味しいお店です。なぜか「おでん」もあります。一度行ってみてください。
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