「顧客接点」の場としてWebサイトの運営がリアル店舗と同じかそれ以上に重要となる事業だからこそ、上記の状況は是正する必要があるとの課題をお持ちでした。属人化を解消することによる安定したwebサイト運営、顧客接点としてのwebサイトの使いやすさの両面を追求したプロジェクトです。
今回の取材で使わせていただいた
表参道本社ショールーム
(カレンダー予約システムも構築しました)
野本 麻美さん(マーケティングソリューション部 ※構築当時)
渡邉 智之さん(マーケティングソリューション部 ※構築当時)
ディレクター 近藤 祥公(ディレクション担当)
—— 野本さんと渡邉さんとは一般のお客さま向けのサービスサイトのリニューアルをご一緒しました。今回のプロジェクトにおけるおふたりの役割を教えてください。
渡邉 Webサイトの管理・運営をするマーケティング部署でフロント側とシステム側をそれぞれ担当していましたが、関連部署と関わりながらプロジェクトをリードする立場にありました。具体的にはどんな課題があるのか、どう解決するのかを整理する役割です。
野本 インサイドセールス、広告、営業など部署ごとの定例ミーティングを都度行って、課題を吸い上げていきました。
——たくさんの機能やコンテンツのあるサイトなので、その裏にはたくさんの人がいて調整が大変そうだなとは感じていました。
渡邉 思い出すと鳥肌が立ちます(笑)。ただ、各部署の担当者も協力的でそれぞれの意見を集約していくことで対応はできました。
—— リニューアル前はレスポンシブ化のほかに、どんな課題がありましたか?
渡邉 リノベるにおいては、社内にシステムに触れる人が、専門知識のあるマーケティングのメンバーに限られていたこと、独自開発のCMSが複雑だったこと、旧サイトの開発から6〜7年経ってかなり老朽化していたので、運用保守のコストがかかること、Webサイトのどこを修正するにも開発担当者に依頼をしなければならず時間がかかること、このあたりを課題と感じていました。
野本 こうした課題を踏まえて、次のアクションをどうするかという議論からリニューアルの検討は始まりました。
渡邉 旧サイトがフルスクラッチ(既存のソフトを使わず独自にシステムを開発する方法)の環境だったので、「もう一度独自開発をする場合の選択肢」と「SaaSを導入する場合にはtoCに強いもの、toBに強いものと選択肢」があると整理し、まず、それぞれの対応方法を進めた場合のメリット・デメリット・リスクを洗い出しました。
野本 ノーコードやローコード開発にするか、MAツールと連携できるCMSにするか、そんな検討もしましたね。
渡邉 そのうえで、ここだけは絶対に守りたいという必要最低限を絞り込んで、SaaSやスクラッチ開発の会社など何社かとお話をさせていただきました。
—— そこから今回のSaaSのカスタマープラットフォームを選んだ理由は何だったのでしょう?
渡邉 リノベるのサイトは複数のCRMと連携する必要があったのですが、今回のプラットフォーム以外は実現が難しかったのです。そこが大きな判断ポイントになりました。もちろん独自開発をすれば連携はできますがコストが上がってしまいます。それでは課題が解決しないので選ぶならSaaSだろうと検討を進めていきました。いくつか比較しましたが、今回選んだプラットフォームはツールが使いやすくWebの知識が浅い人でも操作が容易そうで、リノベるが求めるデータのつなぎ込みもかなえられそうと感じました。
渡邉 プラットフォームのメーカーさんからご紹介いただいたパートナー企業も色々でした。なかには開発を外注する会社もあり、それだとコミュニケーションが図りづらそうだな…と思いました。JBNさんはコンテンツ制作から開発に至るまで一貫して対応していただける、その体制はありがたいなと思いました。
野本 パートナーさんそれぞれのサイトを見ると、おそらくここはMA寄りかなとか得意領域がわかります。当社が求めているのはコンテンツを作ってサイトを運用すること、だからJBNさんの成り立ちがWeb制作会社ということは選定のひとつの大きな理由となりました。
渡邉 他社ツールでは実現が難しかったCRMとの連携が、JBNさんからは「できる」とご回答いただけたことも大きかったです。
——受注前から技術的なご質問をいただいて、数か月かけてやりとりすることは私たちにとっては珍しいケースでした。
野本 受注前から細かな点まで何度も確認しましたね。
渡邉 細かいと思われてるかなって、少し心配しました。
——(笑)いざ動き出してからは、すぐはじめられる安心感がありました。
野本 JBNさんにお願いしたいと早い段階で決まってはいたのですが、関連部署が多岐に渡るため、社内の懸念点を洗い出し、払拭する工程が必要でした。そのため、正式なご発注まで時間を要してしまいましたね。
—— なるほど。仕様調査というフェーズがありましたね。膨大な資料をいただいて、まずそれを紐解くことからはじまりました…。
渡邉 資料をかき集めてお渡しして現状をご説明しました。リノベるのサイトの大きな役割にリードの獲得があり、フォームから送信された情報をデータベースに格納してCRMに連携するのですが、そのフォームが6〜8種類あります。それによってシステムが複雑になっていました。フォームの最適化が大問題で、独自にいろいろ作ってあるものがちゃんと移管できるのか確信が持てず悩みました。
野本 できる限り開発はせず元からある機能を使いたいと思っていたのですが、結果的にオペレーションを変えないためにフォームまわりは若干の開発をお願いしました。
—— システムは複雑でも運用しやすく、誰でも編集できることが求められたので、どんな方法がいいのか、一つひとつ検討していきましたね。
—— システム開発ではイベント参加予約のカレンダーシステム、イベント情報群の構造・データ管理に課題があり、どうしようかと思い悩んだ記憶があります。プラットフォームの機能でどうやって管理しやすくするか、弊社のシステム担当の荒井も頭をひねっていました。
野本 各地のショールームや説明会(イベント)の申し込みシステムの改修は最重要課題でした。完成した申込システムでは、これまでどおり、開催場所ごとに日程を選べて予約ができるという機能を損なわず、ユーザーが選択しやすいインターフェースに変えることができ、お客様のお申し込みもしやすくなったと思っています。
渡邉 可能な限り今回導入したカスタマープラットフォームの標準機能を使いつつ、現状のオペレーションに変更を加えないことに主眼を置いていました。とはいえ旧イベントページでは、都道府県ごと、ショールームごと、日程ごとに分けられて、1万ページくらいあったので、ここは変えないといけないなと課題を感じていました。
SEO対策として検索キーワードで集客することも念頭におきながら、分散するページを集約すると運用もしやすくなるという指針のもと、私たちも苦労しつつ、対応していただきました。
—— 結果として、プラットフォームのデータベースでイベント関連の情報を一括管理することで、情報更新のしやすさと構造のシンプルさを実現できましたね。
—— その他にも重視していたシステム開発はいかがでしょう。
渡邉 物件情報については「自社で登録する物件」と「他社からあずかる物件」など、インプットに複数の経路があります。しかもデータ量が膨大で今回導入したプラットフォームのデータベースでは受け止めきれませんでした。お客さまに訴求する情報の内容は変えず、社内のオペレーションも変えないためにAWSと連携するやり方に行き着くまでが大変でしたね。
—— CRMに関してはいかがですか。
渡邉 今回導入したカスタマープラットフォームに強力なCRMツールがあることは認識していたものの、プラットフォームから複数のCRMに連携するといういわばデータの通り道にしましたが、これが想像よりも大変でしたね。
—— 既存ツールに加えて新しいプラットフォームが導入されることに対して社内から声はありましたか?
野本 CRMツールとして説明すると既存のCRMツールとの位置づけの説明も必要になり複雑になってしまうので、社内に向けては、あくまでコンテンツの管理ツールとして説明をしました。
渡邉 社内には「顧客対応のオペレーションは変えない」、不用意に不安を与えないように「大丈夫です」と安心いただけるように丁寧に説明をしていきました。
——なるほど。フロントエンドについてはいかがですか。
野本 旧サイトでは「リノべるがどんな会社」で「どんなことができるのか」という事業内容がお客さまに伝わりにくい状態でした。レスポンシブ化もされてなかったですし、SEO対策に重要なページの読み込み速度が遅いという課題もありました。わかりやすいコンテンツを用意し、サイト内の動線を整え、加えて読み込み速度の改善やUIのデザインを一新しました。さらに自分たちでWebサイトの更新をしやすくという当初の目的達成ができることを目指しました。
—— 私たちも、できるだけモジュール(更新しやすい入力用のインターフェース)でページを構成して運用しやすく、あとはパーツを共通化したりと工夫しました。
渡邉 最初は整える程度で考えていたのが、結局フルリニューアルにつながりましたね。モジュール化とトンマナを統一していただいたおかげで、コーディングできなくても誰でもページが作れるようになりました。
野本 おかげさまで、まったくWebサイトを制作したことがない社員でも30分ほどレクチャーすれば素敵なページを制作できるようになりました。
誰でも作れるようになったページ例:
ワンストップサービス
渡邉 2023年5月にお声がけした際は、年末までにリノベるサイトすべての移管を終えたいとご相談しましたが思ったより大変でしたし、ものすごくご迷惑をおかけしたと思っています。
—— いえいえ(笑)
渡邉 イベントカレンダーやCRM連携など、ひと筋縄ではいかないことが進行する過程でわかってきたので、半年で全てではなく、無理なくできる範囲で段階的にリリースしていくことに変えて、結果的に1年半かけて移管を完成させました。頻繁にコミュニケーションを取るなかで、当初のスケジュールは現実的ではない、じゃあ、どうやったら実現できるかと、前向きにやりとりしながら進めていけたと思っています。
野本 全員が課題解決という同じゴールに向けて取り組み、MTGでも意思決定をしながら推進できたのは大きかったですね。
—— すごくいいチーム感でした。
渡邉 近藤さんがいい人だから。
一同 (笑)
渡邉 進めていくうちにいろんな問題が出てきて、こちらから無茶なボールを投げ続けていたように思うのですが、それに対して近藤さんやJBN側の皆さんが真正面から向き合ってくださいました。
野本 そうですね。荒井さんも西澤さんも金子さんも佐藤さんも。どのシーンでも難しいボールばかりでしたが、皆さんが真正面から課題に向き合い解決方法のアイデアを出してくださいました。
渡邉 毎週、顔を合わせて意思疎通のもと、密度の濃い関係を築けたのが良かったです。
—— おふたりが社内の調整をしてくださったおかげです。
野本 私たちはリノベるに入社する前にWeb制作の仕事に携わっていたので、JBNさんの立場がよくわかりました 。そういった背景もあり、リノベる社内の情報を可能な限りコントロールし、JBNさんにわかりやすくお伝えするよう努力ができていたように思います。
渡邉 一番大事なのは、どうやったらできるか相互理解のうえで前に進めていくことですね。
—— 現状での評価をお聞かせください。
野本 会員機能などロードマップはもう少し先まで引いてあります。今回のプラットフォームでできそうなことも含めると、8割くらい達成できていそうかとは考えています。非常に良いプロジェクトだったと思っていますし、Webについて詳しくない部門の社員でも取り組みやすいという声を聞くようになり、運用もしやすくなりました。
渡邉 最初に挙げた課題、「属人的な体制にならないこと」「サイトの品質とスピードをあげること」「運営コストをおさえること」。それらは全て解決できています。
—— 今後の展望についてはいかがですか。
野本 会員機能について考えてはいますが、当社の事業戦略が変化することに合わせて構築当時に描いたロー ドマップを改めて見直し、書き換えしていく必要もあるかと考えています。今回導入したプラットフォームを使う前提で、LINE連携やスコアリング機能などに着目しています。
—— CRMの面では現状のプラットフォームは通り道として使っていて、CRM周辺機能は使われていないので、今後活用できるといいですよね。
—— プロジェクト全体への感想やJBNへのご要望があればぜひうかがいたいです。
渡邉 くり返しになりますが、今回導入したプラットフォームを使って叶えたい世界が作れたなと思っています。そのための課題はたくさんありましたが、それにひとつずつ向き合ってくださったJBNさんの対応にはとても感謝しています。
野本 近藤さんはじめプロジェクトメンバーの皆さんは長野にいらっしゃって、長野と東京の距離は(コロナ禍前は特に)プロジェクトを進めるには障壁に感じられたかと思いますが、今回のプロジェクトにおいてはまったくストレスを感じませんでした。定期ミーティングがあったり、Backlog(プロジェクト管理ツール)を使ったり、時にはお越しいただいたり、公開前は電話で、公開時はGoogle meetをつなぎながらなど、都度コミュニケーションの方法を工夫しながらやりとりしたことで、距離を感じることなくコミュニケーションできたのが良かったです。
—— ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。
野本 現在は運用のフェーズに入り、これまで課題解決が最優先で私たちの今後の事業についてあまりお話しができてこなかった部分があると反省しています。今後は、私たちの事業の方向性を改めてご理解いただいたうえで、一緒に成長していけるパートナーとしてご提案やアイデアをいただきたいなと思っています。
—— はい。いろいろアイデアをお出しできたらと思います。
野本 BtoCに加えてBtoBの事業も伸びているので、JBNさんの得意とするMAの施策の知識をぜひ当社でも学ばせていただきながら先に進んでいきたいと思いますので、引き続きご相談させていただけると嬉しいです。
—— ありがとうございます!