ポストインタラクティブへ向かうWebサイト

postinteractiveWebサイトは、ユーザーが抱える問題解決という視点、例えば、「ユーザーの情報収集段階を見極めた適切なコンテンツアプローチ」「今すぐ解決したいという痛みへの対応」など、情報の即時性や網羅性、検索性を消化することで、ユーザーの行動や態度変容を促し、成果をあげることが可能になった。事実、ここ数年で多くの企業がコンテンツSEO、ランディングページ、コンテンツのSNS拡散などユーザーの問題解決コンテンツを軸に人々をサイトに集め、成果につなぐ取り組みが盛んに行われている。

しかし、インターネットが本来持つと言われる特徴の一つ「双方向性(発信者と受信者の間でネット上でコミュニケーションが成り立つという特徴)」に関して言えば、企業のWebサイトはインターネット以前だ。

 

いつまでたっても「メディア」になりきれないWebサイト

わざわざインターネットの特徴である「双方向性」についてとりあげWebサイトの問題として指摘しているが、これは単に思いつきで話しているわけではない。Webサイトがいつまでたっても「メディア」と呼ばれない、「メディア」になりきれない理由がここにあると考えている。いや、もちろん、Webサイトは文章や画像、映像などの情報を伝達するのに用いられる、広義の意味ではメディアだ。しかし、テレビメディア、雑誌メディア、最近ではソーシャルメディアなど、情報発信を担う他の「メディア」と名がつく情報発信媒体と比べるとあきらかに影響力は弱い。このWebサイトの影響力の弱さについて、ターゲット設定やデザイン、コンテンツの品質について、その問題点が指摘されるが果たして本当にそれだけが原因だろうか?私は、発信者が受信者に情報を届け、価値観のやりとりを行うこと(双方向性のやりとり)が圧倒的に苦手であることにその原因があると考えている。

双方向性という特徴を活かすことで「現実の構築力」を手に入れたソーシャルメディア

他方、「リツイート」や「いいね!」「コメント」など、双方向性が洗練された形で消化されたソーシャルメディアの影響力が格段に高まっていることは疑いの余地を差し込むことはできないだろう。
ここでの影響力とはメディアによる「現実の構築力」のことを指し示す。マスメディアは周知の通り、圧倒的な情報流通の力を所有することで、私たちの現実の構築に大きな影響を与えてきたが、ソーシャルメディアは、即時性、網羅性に加え、双方向性という特徴を活かすことで、まったく別のやり方で「現実の構築力」を手に入れた。

現在ではマスベースでは取り上げられることのなかった情報もまた、多くの人にシェアされ必要な人に届けられ新たな現実が作り上げられていく。フェイクニュースや誹謗中傷といった注目を集めやすいツイートが悲しい現実を作り上げてしまっているという問題に向き合う必要はあるが、メディアによる「現実」の構築のされ方が大きく変化しつつあるこの時代に、私たちはWebサイトという企業のメディアにおいてもまた、「双方向性」という視点から、新たな一歩を踏み出していかねばなるまい。

 

Webサイトと双方向性、ポストインタラクティブへ

では、Webサイトはどのように「双方向性」を得ることができるのか?組織が運用するWebサイトにおいて、ネットを通じユーザーと双方向で関わり、ユーザーが選び取る現実を構築する方法はいまだ確立されているとは言い難い。しかし、限定的ではあるが、リアクションやフィードバックを評価する仕組み、個別対応を可能にするコミュニケーション機能、より多くの人に効率よく情報を届けるための仕組みなど、「双方向型」の機能をWebサイトは内包し始めている。

私はWebサイトで取り組まれはじめたこの双方向の取り組みを、「ポストインタラクティブ」という流れに位置付けたい。これまで、Webサイトにおける「インタラクティブ」の概念は、ユーザーのアクションへの反応というUIの観点で語られることがほとんどであった。単なるUI上のリアクションを経過したユーザーとの価値観のやりとりを実現する双方向という概念=「ポストインタラクティブ」をWebサイトは身に纏い、本当の意味で「メディア」として飛躍することが今後は可能になるのではないかと、そんな風に今は考えている。

 

執筆

坂田大輔

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ポストインタラクティブの流れにWebサイトを位置付け、企業サイトの「メディア」化を支援。一見、関係が無さそうな具体的な事象を繋ぎあわせ、抽象的な何かを見つけることが好きです。株式会社JBN専務取締役。ディレクター/ファシリテーター/SBWをプロデュース/HubSpot導入支援/SLOWLIEというバンドをやっています。

 

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