出勤して、「さあ、今日もやるかあ」とパソコンに向かうと、役員塚原から「稲田くん、ちょっといいかな」と声がかかりました。
稲田「何ですか?」
塚原「あのさあ、2日後に『JBNユーザーミーティング』を予定しているんだよね」
稲田「ああ、聞いています」
塚原「それでさ、今回のテーマは「合意形成について」なんだよ」
稲田「大切なテーマですね」
塚原「うん。それで講師にお話してもらう前に、イントロとしてJBN事例をちょっと話そうと思うんだけど、稲田くん、いっぱい持ってそうだから教えてくれないかな」
このタイミングで…!
今日の予定はもうあるのに…!
でも、大切なテーマだし、せっかくなのでブログでまとめようと思います。
社内の情報共有だけで終わらせないで、アウトプットにも活かすようにしてから、何かテーマを投げかけられたら「テキストにまとめるいい機会だ」と思うようになりました。
なぜ、Webサイト制作において合意形成が重要なのか?
それは、Webサイトは「企業の経営戦略を実現するためのツールだから」です。
そして、このツールは「ユーザーのためにある」と認識することが大切です。
ユーザーが企業やサービスを発見し、理解し、検討するために大切な役割を持っているツールなのです。
この2点がとても重要です。
Web担当者さんがよく嘆かれる
「ほぼ出来たものを経営陣チェックを受けたら、ひっくり返された」
「ぜんぜん違う方向性に修正された」
という問題は、この認識について経営者とギャップがあったことを意味しています。
もし、経営者が「もっと派手に目立つようにしろ」「もっと赤くしろ」など感覚的に言ってくることがあるとしたら、「Webサイトはユーザーが企業やサービスを発見し、理解し、検討するもの」(経営者のものではない。ユーザーのもの)と理解していないからです。
*上記について、詳しくはブログ『Web担当者さんは困っている。「だけど」を孤立させないために』をご覧ください。
Webサイト制作において、「何を」合意するのか?
話を戻します。
「Webサイト制作において、なぜ合意形成が重要なのか?」の答えは、「Webサイトは企業の経営戦略を実現するためのツールだから」でした。
ですから、Webサイトを作る際に重要なのは
- どんなデザインがよいか?
- どんな機能が今っぽいか?
ではありません。
Webサイトを作る際に(特に初期において)重要なのは
- どんな中長期計画を描いていて
- 今回のWebサイトが貢献するテーマはどこで
- そのテーマにはどんなユーザーが想定できて
- どんな成果設定なら実現可能か
- 公開後はどのようにPDCAを回せるか
ということです。
もっとシンプルにいうと、
「今回のWebサイト制作で、事業計画のどの部分に貢献できるようにするか」
という目的の設定が最重要です。
これは経営に関わることですから、Web担当者と制作会社で勝手に決めましたというのは難しい。
- まず制作会社が中長期計画を把握
- 経営陣および担当者とのミーティングで現状の課題と優先順位を話し合う
- 課題に貢献できそうなWebでのストロングポイントを探し出す
- 「まずはこの領域をWebの管轄にしてみよう」と全員で共有する必要があります
そのための合意形成です。
つまり、合意形成とはWebサイトの目的と役割を合意するということです。
Webの目的と役割の例)
- 中長期計画として新規分野の参入が重要
- 新規分野への営業活動がなかなか実らない
- そもそも新規ユーザーの情報が社内に無い
- そのためアポイントが難しく、ボトルネックになっている
- ストロングポイントは自社技術の水平展開
- Webサイトの目的と役割を下記に設定
- 目的「新規分野参入におけるボトルネックの解消」
- 役割「新規分野ユーザーの個人情報獲得し、営業にパスする」
- Webで新規分野ユーザーが集まるような技術コンテンツを用意する
- Webで集まったユーザーがアクションするように設計する(技術相談フォームや資料請求フォーム)
- 獲得した引き合いを営業スタッフにパスし、営業活動に貢献する
合意形成の大切なメリット
また、このミーティングには大きなメリットがあります。
経営者と話を重ねていくうちに、経営陣はこのように発見していきます。
「そうか。ホームページのことを考えるんじゃなくて、経営のことを考えて制作会社に質問したり、相談したりすればいいのか」
これはとても大切なメリットです。
経営者がこのマインドになってくれれば、Webサイトの目的と役割の精度はぐんと上がります。
設定した「目的と役割」がWebで実現可能か検討する
Webサイトの目的と役割について協議が進むと、次は「どんなやり方」で「どんな成果指標」なら「計測できるか」を検討します。
ここは主に制作会社の役割です。
目的が明確に設定できたとしても、その実行がWebで困難であったら意味はありません。
(Webがスタートしても、社内準備が整っていないという状況もよくあるケースです)
また、計測できない成果設定はサイト公開後のPDCAが機能しません。
ですから、場合によっては目的をステップ毎に分解し、実現可能なステップ1から始めることも必要です。
その際は分解したステップ、例えば1〜4までを並べ、「1が達成したら2へ、その次は3へ」とサイト公開後の運用プランをひくことになります。
JBNの合意形成の事例
顧客 長野県の部品製造メーカー「T」(社員500名規模)
課題 ナショナルメーカー強依存からの脱却(当初)
現状 Web活用について月1回の定例ミーティング(3年目)
*参加者は顧客社長、経営戦略室(Web担当)2名、営業部1名、採用担当者1名の計5名
- 3年前にWebサイトをリニューアル(合意形成を重ねた)
- サイト公開後、当初目的への成果と共に、新市場からも反応が生まれる
- 定例ミーティングをスタート(毎月)
- 改めてサイトの目的と役割を再設定
- 新しい目的を達成するためのコンテンツ追加
- 中長期計画の進捗状況を見ながら、Webでの貢献ポイントを話し合う(採用について、自社開発について、社内体制について等)
ここでのポイントは合意形成の取り組みをサイト制作時だけでなく、公開後にも実行していることです。
経営者が「Webサイトは企業の経営戦略を実現するためのツール」と理解してくれると、より積極的にWebを活用しようというマインドになります。
「合意形成」はサイト制作時において迷子にならたないために大切な事項ですが、公開後のサイト運用を抜け殻にしないためにも非常に重要です。
近道がない分、時間がかかりますが、検証と実行を積み重ねた分だけ、「自社専用のWeb活用」が蓄積されます。
ぜひ取り組んでみてください。
*長野県の部品製造メーカー「T」については下記ブログをご覧ください。
『BtoBサイトは自社の製品や技術・取り組みの「価値」を世に問う場所』