「コロナ禍における営業対策としてWeb活用に取り組むべし」
と上層部から指令を受けている長野県企業は多いと思います。
BtoB、BtoCによらず同じ状況ではないでしょうか。
それ自体は賛成なのですが、「だからサイトリニューアルを検討している」という状況は個人的にちょっと違和感があります。
目的は「営業貢献するWeb活用」です。
サイトリニューアルが必要不可欠とは限りません。
例えば、精密なネジを製造できる『ネジネジ製作所』があったとして。
企業イメージはこんな感じです。
ネジネジ製作所の与件
- 精密&微細なネジを製造するのが得意
- 他社に断られた難しいネジも作れる技術力(大変ではある)
- 試作からも対応可能
- 一般的なネジ会社と比べたら費用は高め
- 安価な大量生産品ではなく、高価な電子部品、電気自動車、医療製品、航空・宇宙の市場が向いているかもと思っている
- それらの市場との繋がりがなく、有効な営業活動ができないのが課題
コロナにより展示会出展も難しくなり、営業活動も活発に動くことができず、手詰まりを感じている中で、70歳の社長から「Webから受注が取れるように取り組みなさい」と営業部に指示がきた状態。
全部、妄想ですが。笑
この段階でJBNに電話がかかってきたとします。
サイトリニューアルを検討しているネジネジ製作所からの電話
「サイトリニューアルを検討しているので見積もりがほしいのですが」
一言目はだいたいこれで始まります。
ぼくはふんふんと頷きながら、ネジネジ製作所のWebサイトを見ながら、いろいろ根掘り葉掘りお聞きします。たぶん30分くらい。ひょっとすると1時間くらい。
ヒアリングした結果、四つの要点がはっきりしたとします。
- コロナで営業活動ができないので、Webから受注が来るようにしたい
- ターゲットは電子部品、電気自動車、医療製品、航空・宇宙などの市場にいる新規ユーザー
- 営業活動のためにもできれば三ヶ月後には完成させたい
- 予算はよく分からないけれど200〜300万円くらい
これは下記に言い換えられます。
- 営業活動に貢献するWebが欲しい(新市場からの引き合いが欲しい)
- できるだけ短期でスタート
ここでの予算はあまり意味がなく、どちらかといえば「上記目的達成のために200〜300万円という予算を最大限発揮する方法を考える」と捉えた方がよいはずです。
ネジネジ製作所のWebサイトを見ると、結構ちゃんとした内容。採用コンテンツもあるし、CSR情報もかなりしっかり作っている。社員さんが時々書いているブログの他に、社長ブログが何と2010年から続いていて、記事数は300本を超える。全体的になかなかのボリューム。
ここでぼくは電話での話を聞きながら、不安要素を考え始めます。
不安要素(1)
200〜300万円の予算でサイトリニューアルは出来なくはないけれど、「企業サイトをリニューアルした」ということだけで予算は終わってしまいそう。
Webサイトは新しく見やすくなったけれど、本来の目的であった「営業活動に貢献する」は薄くなりそう。いや、正直いうと、何もできなそう。
不安要素(2)
「できるだけ短期でスタート」も難しそう。
企業サイトは会社の顔でもあるので、社内の合意形成が大変です。すごく大変です。三ヶ月の予定が半年になるのもよくある話です。
「営業活動のためにも早くスタートさせたい」という要点の障害になる可能性があります。しかも、その障害はまったく別の文脈なので、プロジェクトがまっすぐ進まないというリスクも多々あります。
JBNからの提案
サイトリニューアルを検討していると電話でいろいろお聞きした後、「サイトリニューアルをしない、という選択肢もあるかもしれません」とぼくはお伝えするかもしれません。
「え?」と電話口で言われそうですが、ありえます。
ネジネジ製作所の要点は「営業活動に貢献するWebが欲しい」「できるだけ短期でスタート」なので、その最適値を考えると、「何が何でもWebサイトリニュール」でなくても良さそうです。
逆に、企業サイトのリニュールを起点にしてしまうと、「目的に対して使える予算が薄れる」「スケジュールが合わない」という問題が浮上しそうです。
同じ300万円を使うのであれば、例えば下記の予算分配が考えられます。
- 100万円:『精密&微細ネジ』に特化した技術サイトを作り、ターゲットを集客する
- 100万円:サイト公開後のマーケティング運用費にあてる
- 100万円:サイト公開後のランディングページ2本の制作費にあてる
- 41万円:MAツール『HubSpot』の利用実費にあてる(*)
(*)Starter Growth Suite(月額6,000円)とCMSHub(月額28,800円)
このプランの長所は「見込み客を集める施策に予算を全部使える」ということです。
また、「サイト公開後のWeb活用の運用費を確保できる」です。
上記では100万円の『精密&微細ネジの技術サイト』が集客施策にあたり、100万円のマーケティング費用と、100万円のランディングページ2本制作が運用費にあたります。
Webサイトは「道具」なので、使わないと何も生まれません。
でも、道具を作ることに精一杯で、また、道具制作に予算を使い切ってしまい、公開後、Webを活用することなく終わってしまう企業は散見します。
この現象は「Web活用=サイトリニューアル」という思い込みから多く生まれます。ネジネジ製作所さんもそうです。
『営業活動に貢献するWebが欲しい(見込み客の引き合いが欲しい)』が主題なら、営業活動に特化したWebサイトを検討すべきです。
また、Webサイトを作っただけではただの箱です。運用するための予算を確保しておくべきです。
Web運用がWeb制作と同じくらいに重要な時代に
前章での予算配分をネジネジ製作所にお伝えすると、「いいとは思うんですが、合計341万円だと予算オーバーで…」と言われるでしょう。
でも、大丈夫です。国からのIT補助金が活用できます。
IT補助金では上限450万円まで、最大3/4の補助が支給されます。
これはWebサイト制作費には適応されず、マーケティングツールの利用実費や運用費に適応されます。
大雑把にいうと141万円が対象となり、約105万円が支給されることになります。(本当はもっと細かいので支給額は変わる可能性はあります)
予算総額は341万円ですが、実質236万円で1年間のWeb活用を具体的に進められます。
なぜWeb制作費に補助金が適応されず、マーケティングツール(ここではHubSpot)のライセンス費や導入コンサル費、導入設定費用、保守・サポート費に適応されるのか?
成果を出すためにWeb運用が重要だからです。
また、成果の出るWeb運用を実現するためにマーケティングツールが重要だからです。
Web運用(Webマーケティング)がWeb制作と同じくらい重要な時代になったからこそ、国の施策として推進しているという背景があります。
Webサイトを活用するということは、日常の営業活動と同じくらいに、Web上でのマーケティング活動を推進するということです。
皆さんの営業活動のように、Web上でお客と出会い、話し、理解してもらい、信用を重ね、コミュニケーションを続けることです。
それはWebサイトを作っただけでは実現しません。
活動するための計画と予算と人員と戦略が必要です。
だから、ネジネジ製作所さんの課題には下記のようなご提案になると思います。
- 今のWebサイトをリニューアルするのはやめる
- 営業に特化したWebサイトを作る
- 残りの予算を活動費用にあてる
- IT補助金も使い、マーケティングツールを導入する
- サイト公開後、Webマーケティングを通年で実施する
- 総額予算は341万円だが、補助金を使って実質236万円で1年間トライしてみる
まとめ
妄想のはずが、ネジネジ製作所さんへの真剣な提案になってしまいました。
検討してくれるといいのですが。
まとめとしてはこの一言です。
- Web活用は「サイトリニューアル」だけじゃない
- 本当のWeb活用は運用であり、マーケティング
- IT補助金を使えるので国からのサポートを得られる
三言になってしまいました。
でも、本当にそう思っています。
もし、「Web活用=サイトリニューアル」と思って検討している長野県企業の方は、「何のためのWeb活用か?」を改めて再考してもらえると嬉しいです。
もしかしたら、違う方法論があるかもしれませんので。
「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」でももちろん結構です。
お問い合わせいただいたら、電話で根掘り葉掘りお聞きします。ぼくの電話対応は長いです。
IT導入補助金について
IT導入補助金についてはこちらをご覧ください。
ECサイトにも補助金が活用できます。
Webマーケティングについて
Webマーケティングについてはこちらをご覧ください。
マーケティングオートメーションツール『HubSpot(ハブスポット)』についてもご説明しています。