総務経理業務のIT化日記。バイサイドからのインサイドセールス体験

総務経理業務のIT化日記。バイサイドからのインサイドセールス体験JBNの総務経理部門では業務ツールとして様々なソフトウエアやクラウドサービスを導入しています。そして「候補となる商品サービスのピックアップや比較検討」はWeb上でおこなうことが通例になっています。
そこで最近JBNで導入したふたつの基幹業務サービスの検討・導入プロセスを例に「バイサイドから見たインサイドセールス」という視点でレポートします。また、ここではシステム上のポイントよりも、サプライサイドの人の動きに着目してまとめてみました。

体験A:名刺管理サービスの導入検討

JBNのさまざまなコンタクトをコントロールするベースツールとして名刺管理ソフトを導入することになり、2019年秋に検討に入りました。
まず、Aというサービスにねらいを定め、比較のために他に5つくらいの同様のサービスを比較検討しました。Webサイトを読み込むほか、資料ダウンロードや無料体験版のアカウント取得などから検討を重ねた結果、採用したのはAではなく、Sという名刺管理ソフトでした。
言うまでもなく、Sが最も優れている(=少なくとも当社にとって最適)と判断したからですが、実は当社に対するアプローチもS者が飛び抜けて優れていたことはここで押さえておきたいと思います。

要点の整理

Webを介しての検討とはいえ、「最も効果的なポイントで『人』が適切に対応する」ことがいかに重要なのかを、バイサイドとして実感しました。このケースにおける要点を整理すると次のようになります。

  1. 体験版申し込みなどのアクションのあと、あまり日をおかず電話で接触してくる(あまり長く日をおかない)。
  2. 商品の優位性を説明し→相手の同意を得るというアプローチではなく何をしたいのか(目的)を聞き取り→疑問点や不安点を聞き取るという順序でやり取りがある。会話のスキルは高い。
  3. 商品をすすめるのではなく、プレゼンテーションの機会を要請してくる。そこにJBN側関係者がそろうように腐心する。
  4. フェーズごとに、3人ほどの担当者が入れ替わりながら対応をするが、一番最初の人に伝えたこと(例えば不安な点など)が見事に引き継がれていて「その点は〇〇から聞いています。それについては…」と、話したことの答えが必ず返ってくる。
  5. 「契約の合意までこぎつければこっちのもの」というスタンスではなく、「導入直後はスタッフ全員で必ずこれをしてください」といったようなJBN側の導入初期の義務(のようなもの)についても厳しく要求してくる。このサービスを売ることが目的ではなく、当社に根づかせることが目的、というスタンスに好感をもった。

体験B:会計サービスの導入検討

当初Bという会計クラウドサービスを最有力候補として検討し、比較対象としてFを、その後さらにCも検討しました。
BとFには一長一短があり、どちらも当社の要望を完全にかなえるものではありませんでしたが、どちらかといえばBがJBNにとっては適しているという感触がありました。 しかし、結果として導入したのはFです。
機能が複雑で完成度の高い会計サービスは、自社に当てはめた場合のネックが発見できにくく、細かい点まで検証しないと判断ができません。社を代表する担当者とすれば、表面的な使いやすさに惑わされて、致命的なネックを見落とすわけにはいかないのです。
そんな状況の中、F社に決めたポイントを振り返ると次のように整理できます。

F社に決めたポイント

  1. メールにて、映像とオンラインでの面談質疑の時間に自然と誘導された。
  2. 映像の提示の仕方はうまくて内容も比較的わかりやすく、理解は進んだ。
  3. 導入ネックが何点かああったが、他社サービスとの連携の中での解決を提言された。
  4. 電話応対はどちらかと言うと淡々とした感じだったが、不足感はなかった。
  5. 定期的に届いたメールは、テーマ別になっていて読みやすかった。

インサイドセールスに「人」が介在する意味

電話やオンライン面談といえども生身の人間である以上そこには「対人スキル」が存在し、実際に買い手はそれに影響を受けます。だから、対応者の対人スキルを一定レベルに保つことを怠ってはいけませんが、ふたつの体験をしてわかったのはインサイドセールスに人が介在する本質的な意味はそこにはないということです。
Webがビジネスステージとなっているケースでは、リアルな面談でない限りサプライサイドの人的対応力で、結論が変わってしまう可能性はほとんど考えられません。買い手は極めて冷静に比較しようとしているのです。
では「人が介在する意味」はどこにあるのか、実体験をもとに大きく次の2点に集約してみました。

1.使われ方を正しく把握し、不安や疑問を取り除く

商品やサービスについて買い手が「気になっている箇所」は千差万別です。それに対して、提供される商品やサービスは、買い手の個々の事情より最大公約数のユーザーを想定してオーソドックスに組み立てられていて、説明もそうなっているのが普通です。
そのためある程度検討が進むと、Web上では解決できないという壁にぶつかってしまいます。商品サービスの特徴(=実際には売り手が主張する一方的な長所)はweb上に展開されていますが、すでに買い手の興味の対象ではありません。個々の買い手にとっての疑問点や不安点は、サイトに掲載されていないことが多いと思われます。
「商品やサービスをユーザーがどのように使おうとしているのか」「そのためにどこに不安を感じているのか」「どこに疑問を持っているのか」などについてシステムを駆使してもディテールまで読み解くのは容易ではありませんが、会話によって買い手の本音を引き出すことは可能です。
会話のなかで、いたずらに商品サーヒスの長所を力説する無意味さは前述のとおりですが、買い手の不安をひとつひとつ丁寧に、かつ素早いレスポンスで取り除くことができれば、大きな前進となる可能性があります。

2.競合他社との比較検討に力を貸す

競合他社との比較を持ち出すことは、なかなか難しいことかもしれません。自社の商品サービスがあらゆる面で他社に劣っていると自認している場合は無理でしょう。しかし「あらゆる面で劣っている」などというケースが存在するでしょうか。
買い手ががWeb上で商品サービスの検討し購入する場合、ほぼ間違いなく複数の類似商品サービスを比較検討します。検討するとは比較すると同義といっても間違いとはいえません。
しかしながら、Webサイト上であからさまに他社商品との比較を公開することは難しいので、買い手はSNSなどの書き込みを頼ることになります。ところが、前述したようにその商品サービスをどのように使うかはユーザーによって違うので、実際には売り手に直接聞かないとわからない、といったケースが続出します。もし売り手との直接のやり取りのなかで、この違いを教えてもらえたらこんなにありがたいことはないのです。
ところが、先に経験したふたつのケースで、この点についての対応は満足のいくものではありませんでした。細かい点については競合他社の仕様を充分把握しておらず、こちら側のほうが詳しい、ということすら起こりました。
もちろん商道徳上、他社を悪く言うことは許されませんが、「違い」について言及することは可能ではないでしょうか。仮に、自社が劣っている点があったとしても「〜〜といった『使い方の工夫』で解決できます」「◯◯社のこのツールを組み合わせる方法があります」など、違い(短所)を正直に認めながら、解決策を事前に用意しておくことができないものでしょうか。どう転んでも、買い手は何らかの方法で違いを突き止め、それをもとに結論を出すしかないのですから。

補足

ここでいう「人」とは、電話による会話やオンラインでの面談のほかに、チャットも加えていいと思います。ただしチャットと会話はまったく同じではなく、厳密には一長一短があるでしょう。

執筆者

つかはら やすのり

つかはら やすのり

過去の講師歴
●出張セミナー
「インターネットを活用し、「信州の酒」の評価を上げるためのセミナー」(主催:長野県酒造組合)
●出張セミナー
「消費宣伝担当職員向け研修会『Web活用の現在とこれから』」(主催:長野県内団体)

個人的な活動
AISCC(アジア子ども交流支援センター)理事 砥石伊の会 会員・広報担当

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