ブランドコアの見つけ方―“らしさ”は「自社の現実」とマーケティングから始まる―

ブランドコアの見つけ方―“らしさ”は「自社の現実」とマーケティングから始まる―

目次

はじめに

「ブランドコアをつくる」という取り組みは、多くの場合、理想や理念から出発しがちです。しかし、そうした言葉が社内外に浸透せず、表面的なスローガンに留まってしまうことも少なくありません。ブランドコアは、単なるコピーや理念ではなく、組織の行動を支える“現実に根ざした軸”でなければなりません。

本稿では、空想的な理想からではなく、日々の活動とマーケティングの接点から立ち上げるブランドコアの設計プロセスを紹介します。

1. よくある誤解:「存在理由」から語りはじめて失敗する

ブランド構築のフレームとして、「なぜ私たちは存在するのか?」という問いから始めることは、一見すると正しいアプローチのように思えます。実際にビジョナリーな組織においては有効です。しかし、課題解決や業務遂行を通じて成長してきた企業にとっては、「理念先行」の語りはかえって逆効果になることがあります。

理想が現実と乖離していると、社員の共感を得られず、メッセージも顧客に届きません。
だからこそ、まずは自分たちの「今ここにある実感」を出発点とすることが大切です。

2. 出発点は「自社の現実」の把握

ブランドコアの設計は、「今の自社が何者なのか」を把握するところから始まります。ここでは主観にとどまらず、外部の視点を取り入れた客観的な分析が重要です。

例えば:

  • SWOT分析:自社の強み・弱みと、外部環境の機会・脅威を明確にする
  • PEST分析:政治・経済・社会・技術の視点から、自社を取り巻く外部環境を整理する
  • ポジショニングマップ:競合他社と比較しながら、自社の立ち位置を可視化する

こうした分析によって、組織のリアルな特徴や、選ばれている理由、競合との違いが見えてきます。これが、ブランドコアの土台となる「素材」です。

3. 現状から導くマーケティングメッセージの設計

自社の現状が見えてきたら、それを外部にどう伝えるかを設計します。この段階で大切なのは、「伝えたいこと」と「受け取られること」の差を意識することです。

  • 現在、自社はどんな言葉で語られているか?
  • 本来、どのように理解されたいのか?
  • そのギャップを埋めるには、どのようなメッセージが必要か?

一方的な発信ではなく、市場との対話の中でブランドを位置づけ直すことが必要です。たとえば、同じ技術でも「性能」ではなく「安心感」として伝える方が響く場合もあります。

4. “らしさ”を言語化するプロセス

ここからは、ブランドの本質的な“らしさ”を言葉にしていくフェーズです。単なるスペックや理念ではなく、「共感されるアイデンティティ」として再構成する作業です。

考慮すべき視点:

  • 機能的価値:製品・サービスの性能や成果、便利さ
  • 情緒的価値:安心感、親しみ、感動、誇り
  • 社会的価値:社会や業界への貢献、倫理性、持続可能性

また、ブランドパーソナリティ(性格)を明確にすることも有効です。たとえば「信頼される専門家」「情熱的な挑戦者」「控えめなこだわり屋」など。
これらをもとに、自社らしい言葉を選び抜いていきます。

5. 社会性との接続:鍵は「選択」と「焦点化」

現代のブランドに求められるのは、単なる経済的価値ではなく、社会との関係性です。SDGs、ダイバーシティ、環境配慮、情報の透明性——さまざまな社会的要請がある中で、すべてに応えるのは現実的ではありません。大切なのは、自社にとって意味のあるテーマを選び、そこに戦略的に焦点をあてることです。

例えば:

  • 自社が取り組む地域・業界の持続可能性
  • 若手やマイノリティの育成・支援
  • 技術の伝承や標準化への貢献

こうしたテーマは、ブランドコアの言葉に深みと信頼性を与えます。

おわりに

ブランドコアは、企業の中に“もともとある価値”をすくい上げ、それを言語として共有可能にする作業です。

現実の観察 → 言語化 → 社会との接続

この3段階を経て、共感され、行動を促すブランドの核が立ち上がります。理想や抽象から始めるのではなく、今の自社に根ざした「らしさ」から出発すること。それこそが、信頼され、選ばれ、持続可能なブランドを生む道です。

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