JBNセミナー「選ばれる企業は、何を語り、どう届けているのか? ― 社会のニーズに応え、プレゼンスを築く情報戦略 ―」開催レポート
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株式会社JBNは、2025年9月30日(火)に「選ばれる企業は、何を語り、どう届けているのか? ― 社会のニーズに応え、プレゼンスを築く情報戦略 ―」というセミナーを開催しました。
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登壇者には
・社会学者・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長 上野千鶴子氏
・SDGパートナーズ有限会社 代表取締役CEO 田瀬和夫氏
・信濃毎日新聞株式会社 メディア局ニュースメディア戦略部 次長 福澤昌史氏
の3名をお迎えし、企業が社会とどう関わりどのように情報発信を行うべきかについてさまざまな角度からお話しいただきました。
この記事ではその講演内容の概要をお伝えします。
※各講演の詳しい内容は後日改めて本サイトでご紹介いたします。
講演レポート
田瀬和夫氏講演:“きれいごとで勝つ”ための戦略的な情報発信とは?
SDGパートナーズ有限会社 代表取締役CEO 田瀬和夫氏
田瀬和夫氏からは、企業が社会的責任を果たしながら持続的に成長するためのサステナビリティ戦略について講演いただきました。

企業経営を「人体」にたとえ、これまで重視されてきた戦略(頭)やビジネスモデル(筋力)に加え、「内臓の健康=サステナビリティ」が企業の長期的存続を支える基盤であると解説。内臓を健康に保つ企業へ長期的に投資する考え方が、ESG投資の基本にあると述べました。
また、SDGs採択以降の国際経済では、収益と社会・環境への貢献を両立させる「ダブルマテリアリティ」の考え方が広がっており、「儲かることと社会貢献は相反するものではなく、むしろ両立する」とまっすぐに強調される姿が印象的でした。
そして、企業が社会から選ばれるためには、「自社の価値観」を明確に定め、それを軸に情報発信を行うことが重要であり、価値観が曖昧なままではどんな情報も意味をなさないと語りました。
上野千鶴子氏講演:あなたの会社は、働き手から“選ばれる”魅力がありますか? ―『劣等均衡』を脱し、信頼を築く組織戦略―
社会学者・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長 上野千鶴子氏
上野千鶴子氏には、企業が多様な人材にとって魅力ある存在であるための組織戦略について講演いただきました。

社会学において、社会問題とは、それが「人々が問題だと考えること」であると定義されます。例えば、かつては「しつけ」とされていた児童虐待や「職場の潤滑油」と見なされていたセクハラが問題となったのは、それを「あってはならないことだ」と主張するクレイムメーカーが現れたためです。
このような新しい概念の誕生が今まで見えなかった経験に新しい定義を与え、新しい現実を作り社会を変えてきたと説明しました。
さらに上野氏は、情報生産社会に生きる私たちにとって、情報とは「落差(ギャップ)」から生じる「ノイズ」が転化したものであると語ります。
企業や家族といった「システム」は、ストレスなくルーティンをこなすことを目的としているため、ノイズ(違和感)の発生を抑制するように設計されています。そのため、ノイズは複数のシステムが交わる場所──たとえば「育児と仕事の両立」といった多重システムに身を置く場面で発生すると説明しました。
そして、多様な人材を組織に取り込むこと(=ダイバーシティ)は、この「違和感を発生させる装置」を意図的に組織内に設置する戦略であると示し、ジェンダー平等や多様性の推進が企業のパフォーマンスや利益率の向上に寄与するという実証データも紹介しました。
実証データがあるにもかかわらず日本企業が変化しにくいのは、経営者が経済合理性よりも “同質性を保つこと” を優先してきた文化が根強いためだと分析。上野氏は、この状態を「劣等均衡」(差別を組み込んだ均衡系)と呼び、マジョリティの特権を失うことへの「怖さ」や「弱さ」が根底にあると指摘しました。
そのうえで、こうした劣等均衡を脱却し、働き手から選ばれる組織へと変わるためには、意思決定権を持つトップ層が、ダイバーシティや男女平等の方向に意思決定権を「行使する」勇気を持つことが不可欠であると結論づけました。
福澤昌史氏講演:デジタル戦略における届け方の工夫と社会との関係構築 ― HubSpotの運用事例をもとに
信濃毎日新聞株式会社 メディア局ニュースメディア戦略部 次長 福澤昌史氏
信濃毎日新聞社の福澤昌史氏には、地方紙として取り組むデジタルシフトの実践事例を紹介いただきました。

福澤氏はまず、「情報が届かないのは、存在しないのと同じ」と述べ、新聞業界が直面する課題──発行部数の減少や若年層の新聞離れ──に言及。紙媒体の時代には自然と読者に記事が届いていましたが、いまは “見つけてもらう努力” が求められていると話しました。
こうした課題に対し、信濃毎日新聞社では読者理解を深めるためのペルソナ設計や、HubSpotを活用した情報配信の最適化などの取り組みを解説。
PV(ページビュー)に代わる、読者の能動的な行動(記事の閲覧数・保存数・サービス紹介ボタンのクリック数など)を指標化した「エンゲージメントスコア」の導入など、データを活用した新しい取り組みを紹介し、「質の高いコンテンツ」と「届く構造」を組み合わせることで、読者との信頼関係が構築され、それが事業継続につながると話しました。
セミナーを通して
今回のセミナーは、企業が「社会の中でどう存在するか」を改めて問い直す貴重な機会となりました。
サステナビリティ、ダイバーシティ、デジタル戦略といった異なるテーマから、「社会課題にどう向き合い、自分たちの言葉でどう発信するか」という姿勢の重要さを認識させていただきました。長野まで足をお運びいただきご登壇いただいた田瀬様、上野様、福澤様、本当にありがとうございました。
セミナーにご参加いただいた方々からも「自社の情報発信や組織のあり方を見直すきっかけになった」、「下の世代のこれからを作るのは私自身であり声を上げ行動を変えていく必要があると感じた」などたくさんのご感想をいただきました。
ご参加いただいた皆さまの感想
- サステナブル思考がない企業は淘汰されるのではないだろうか?との、個人的な問いへの解答をいただけたような気がしました。とても面白かったです。
- 歯に衣着せぬ言葉がたくさん聴けてよかったです。
忖度を重視し実力主義ではない社内風土をもつ日本企業の先は、やはり明るくないな。と、より強く思いました。
子どもへの教育に活かせる内容でしたので、さっそく共有していこうと思います。 - 情報発信をする立場にあるので、「どうしたら届けたい人に届けられるのか」問いの立て方がとても参考になりました。信毎さんの内部事情のようなものも聞けて面白かったです。
- 今回のサステナビリティの講演を通じて、日本や世界の最新の情報に触れることができて、刺激的でした。上野先生の講義もそうですが、長野県にいると、内外から注目される方の講義を聞く機会が少なく、JBNさんには、この様な機会を設けて頂いたことに感謝いたします。
- 福澤様がご自身で試行錯誤されてきた過程を詳しくシェアいただく中で、新聞業界の現状がリアルに伝わりました。メディアでのHubSpotの活用方法を具体的に知ることができ、大変勉強になりました。
- 久しぶりにこんなにヒリヒリと痺れるような学びの時間を過ごさせていただきました。その道を極めた方からしか発せられない強いオーラに魅せられつつ、すべての言葉が直接ハートに響いてくる感覚です。「情報はノイズから生まれる」から「ノイズを見つけに行く」ことから始まるという整理に心底うなずき、ジェンダーをおろそかに扱ってきた人災への早急なレスポンスを、自分自身も起こさなくてはと、明日より実践します。
- 田瀬さんのご講演を聴くのは数回目でしたが、毎回最も重要なことを再認識でき、新たな学びを残していただいています。最新の世界情勢からの近未来予測とSDGsを重ねる取り組みには、私たち企業にとって大きな価値があると感じます。
セミナー後の交流会の様子
セミナー後に行われた交流会でも活発な議論が続き、登壇者と参加者が直接意見を交わす学びの深い時間となりました。
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JBNは、本セミナーで得た学びを今後の活動に生かしながら、お客様との対話を重ね、社会と企業をつなぐ情報発信にこれからも努めてまいります。
登壇者それぞれの講演内容の詳しいレポートは、改めて本サイトでご紹介いたします。