顧客情報のサイロ化問題をAPI連携で解決。HubSpotとSalesforceのデータ統合について
目次
SNSやインターネットの活用が当たり前になった今では、大企業のみならず中小企業でもMAツール・SFAツールの導入は一般的になりました。とはいえ「部署ごとに異なるツールを使用している」というケースは多いのではないでしょうか?
「営業部署ではSalesforceを使用しているが、他の部署では顧客情報は自社独自のシステムで管理している」といったように、データがサイロ化されている様子を、さまざまな規模・さまざまな業種のお客様からよく伺います。そもそもサイロ化とは「組織や情報が孤立し、共有できていない状態」を指します。
サイロ化にも2種類あります。
- 組織のサイロ化:部署・部門間での連携が取れていない状態
- システムのサイロ化:アプリケーションやシステムの連携が取れていない状態
ではデータがサイロ化されていると、どんなことが問題になるでしょうか?MA・SFAツールを活用する視点から、問題点を挙げてみましょう。
サイロ化による3つの問題
1.データが活用できない
例えば、MAツール・SFAツールそれぞれ以下のような顧客情報を蓄積しているとします。
マーケティング部署が使うMAツールで管理している顧客情報
名前 |
Eメールアドレス |
住所 |
電話番号 |
生年月日 |
---|---|---|---|---|
山田太郎
|
-
|
長野県長野市吉田一丁目
|
-
|
1988年4月9日
|
松本
|
mathu@bbb.co.jp
|
-
|
000-111-2222
|
2000年8月12日
|
営業部署が使うSFAツールで管理している顧客情報
顧客ID |
名前 |
Eメールアドレス |
住所 |
電話番号 |
業種 |
---|---|---|---|---|---|
0000001
|
山田太郎
|
yamada@aaa.jp
|
-
|
026-000-0000
|
製造業
|
0002345
|
松本次郎
|
-
|
東京都世田谷区桜新町一丁目
|
-
|
建設業
|
- マーケティング部署がメール配信したい場合、「山田太郎」さんはメールアドレスがわからないので配信できません
- マーケティング部署が「製造業」に絞ってメール配信したい場合、「業種」のデータがないため、業種で絞り込んだメール配信ができません
- 営業部署が製品について電話をしたい場合、「松本次郎」さんは電話番号がわからないので電話できません
など、それぞれの部署・システム内で持つ顧客情報が分断しているため、本来連携をしていれば活用できるデータを、活用できない場面が発生する可能性があります。
MAやSFAの導入にはさまざまな理由がありますが、多くは顧客の「データ収集」や「データ分析」を行い、よりよいアプローチや活動に繋げるという目的があると思います。しかしデータがサイロ化されていると、せっかく顧客に関するデータを収集しても、その部署・そのシステム内でしか活用できず、データの正確性も担保できないという問題も生まれるのではないでしょうか。
2.顧客満足度が低下する・顧客の変化に適応しずらい
例えば「何をきっかけに顧客になったのか」「過去どんな製品を購入したのか」「どんなやりとりを行ったのか」など、過去の活動が把握・顧客の変化が認識できないことで、顧客との適切なコミュニケーションが行えない可能性があります。
3.作業効率の低下とシステム管理費の負担
部署・システムごとに顧客情報のデータを管理するため、それらデータを活用したい場合に、データの受け渡しや加工に工数がかかったり、システム管理費用もその分かかってしまいます。
MAツールとSFAツールの連携のススメ
では、分断されたツールを連携させたい場合「今使っているMAツールは、SFAツールと同じシステムに乗り換えなきゃいけない?」という疑問が浮かんでくるのではないでしょうか。
じつは、システムを乗り換える必要はありません。今使用しているシステムのまま、別のシステムに連携できるAPI*や、システムによっては専用のアプリなども存在します。つまり、部署ごとに使い慣れたツールで、データのみを連携することができます。
例えば、弊社で導入支援を行っているHubSpotは、SalesforceやKintoneなどに連携できる専用のアプリが展開されています。そのため、MAツールはHubSpot・SFAツールはSalesforceを使用する、という活用ケースも多く見受けられます。
今回は、HubSpotとSalesforceの連携について少しだけご紹介いたします。
*APIとは システム同士が情報をやりとりする際に使用される仕組みのこと
HubSpotとは?
HubSpotとは、マーケティング・セールス・カスタマーサービスなどのツールを網羅するCRMプラットフォームです。
見込み客を惹きつける「Attract」、信頼関係を築く「Engage」、顧客を満足させる「Delight」の3段階から成るインバウンド手法を実践できるツールであり、顧客を中心とした活動や情報を蓄積・活用することで、自社のビジネスを成長させます。
HubSpot CRM(顧客関係管理)は無料で提供されており、CRMにMarketingHub・SalesHub・ServiceHubなどの製品を組み合わせることで、一連の活用が可能になります。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
>HubSpot Marketing Hub とは?特徴や機能について解説
>HubSpot Sales Hub とは?特徴や機能について解説
>HubSpot Service Hub とは?特徴や機能について解説
Salesforceとは?
日本でも多くの企業が導入しているSalesforceとは、クラウド型のCRMプラットフォームです。今ではさまざまなCRMプラットフォームが誕生しましたが、SalesforceのCRMはシェア率が世界No.1であり、10年連続で世界No.1のCRMプロバイダーとして選出されています。
(参考:https://www.salesforce.com/news/stories/idc-crm-market-share-ranking-2023/)
Salesforceの製品
Sales Cloud
主要製品の1つである「Sales Cloud」は、Salesforceが提供する営業活動を支援するツール(SFA)です。Salesforceと聞くと、まず思い浮かべるのは「営業管理ができる(SFAツールである)」と思う方も多いのではないでしょうか?
顧客の管理や、商談管理、見積もり・契約など業務を効率化するツールも備えており、営業活動に関わるさまざまな情報を管理・蓄積できる点が大きな特徴です。
Service Cloud
Service Cloudは、顧客が直面した問題や課題に対し、メール・Webサイト・SNSなどのチャネルを活用して的確な回答やサポートを行う、カスタマーサポートのツールです。
また、ナレッジマネージメントという顧客自身で問題解決できる機能なども備わっており、顧客満足度を向上させるための仕組みを整備できます。
Marketing Cloud
Marketing Cloudは、SalesforceのCRMに蓄積された顧客情報を活用して、メール・SNS・広告など、さまざまなチャネルから顧客へアプローチできるMAツールです。
顧客や見込客の行動をトラッキングでき、顧客の反応も可視化できるため、マーケティング結果を分析し、最適なタイミングでオファーを送るなど、より効果的なマーケティング活動の実施に役立ちます。
Customer 360
Customer 360とは、1つの製品をさしているわけではなく、Salesforceのサービス全体をさしています。Sales Cloud・Service Cloud・Marketing Cloudなどで蓄積した顧客に関するデータを1つのプラットフォームで共有することで、情報のサイロ化を防ぎ、企業全体でデータを共有、顧客の全体像が把握できるようになります。つまり、顧客のことを360度の視点から理解できるようになるため、Custmer 360は「カスタマー360度ビュー」とも呼ばれています。
SalesforceはSFAやCRMにとどまらない、顧客のニーズに応えるさまざまな製品があることが特徴であり強みでもあると伺えます。顧客データを中心に、セールス・カスタマーサービス・マーケティングなどの製品が展開されている点は、HubSpotと似ていますね。
連携のメリット
HubSpotとSalesforceの連携により、顧客データを一元管理することが可能です。これにより顧客データのサイロ化を防ぐことができると共に、マーケティング活動で収集した顧客データをセールス活動で活用できるようになります。
顧客に対し、何も情報が無い状態と、マーケティング段階での行動・やりとりが分かる状態では、営業担当者のアプローチも変わると思います。その顧客に適したアプローチが行えるようになり、結果的に顧客満足度の向上やマーケティングと営業の連携強化にも繋がります。
連携での注意点
HubSpotとSalesforceは連携できますが、いくつか注意点もあります。
連携前に自社の環境をご確認ください。
HubSpotのエディションと権限を確認する
HubSpotとSalesforceを連携させるには、HubSpot側で以下の条件を満たす必要があります。
必要なエディション
- Marketing Hub Professional/Enterprise
- Sales Hub Professional/Enterprise
- Service Hub Professional/Enterprise
- Operations Hub Professional/Enterprise
- Content Hub Professional/Enterprise
HubSpotの権限
アカウントアクセスの権限を有効にする必要があります。
Salesforceのライセンスと権限を確認する
HubSpotとSalesforceを連携させるには、Salesforce側で以下の条件を満たす必要があります。
必要なライセンス
Salesforce Edition(※APIアクセスが可能なライセンス)または、Salesforce Professionalである。
◯ API アクセス可能なEdition |
×APIアクセスができないEdition |
---|---|
|
|
Salesforceの権限
- [Salesforceシステム管理者]または[HubSpot連携設定が割り当てられている権限]
- AvailablePermissionSets(利用可能な権限セット)で[HubSpot Integration Permissions(HubSpot連携権限)]が選択されている状態。
- APIが有効化されている
- 「セットアップと構成の表示」が有効化されている
- HubSpotに同期するオブジェクトで「すべてを変更する」ことが許可されている
- 「Modify Metadata権限」が付与されている
- 「App Exchangeパッケージのダウンロード権限」が付与されている
- 「CustomizeApplication」のプロファイル権限が付与されている
双方のデータの用語の違いを理解する
HubSpotとSalesforceでは、用語が異なります。連携されるデータの間違いがないように、双方の用語の違いを理解しておきましょう。
HubSpot |
Salesforce |
---|---|
コンタクト
|
リード
|
コンタクト
|
取引責任者
|
会社
|
取引先
|
取引
|
商談
|
タスク
|
ToDo
|
連携先を明確にする
HubSpotとSalesforceの連携では、コンタクト・会社・取引・アクティビティ・チケットが連携できます。どのデータを連携するのか、連携前に必ず明確にしておきましょう。
また、コンタクト連携の場合は連携先が2種類あります。Salesforceの「リード」に連携するのか、「取引先責任者」に連携するのか、こちらも事前に確認しましょう。
連携例 |
HubSpot |
Salesforce |
---|---|---|
連携する |
コンタクト |
リード |
連携しない |
コンタクト |
取引責任者 |
連携する |
会社 |
取引先 |
連携する |
取引 |
商談 |
連携しない |
タスク |
ToDo |
双方向の同期なのか、一方通行なのか同期方向を明確にする
同期のルールについて、双方向の同期(HubSpot↔️Salesforce)なのか、一方通行(HubSpot→Salesforce/HubSpot←Salesforce)なのか明確にしましょう。
空白でない限りSalesforceを優先
- Salesforce内に該当する値がない場合のみ、HubSpotからSalesforceに値が渡されます。
- Salesforce内に値が存在する場合、HubSpot内の既存の値が上書きされます。
- Salesforceから値を削除すると、その値はHubSpotからも削除されます。
常にSalesforceを使用
- Salesforce内に該当する値がないとしても、HubSpotからSalesforceにデータが渡されることはありません。
- Salesforce内に値が存在する場合、HubSpot内の既存の値が上書きされます。
- Salesforceから値を削除すると、その値はHubSpotからも削除されます。
双方向
- 常に最新の値によって既存の値が上書きされます。
- HubSpotで値が削除された場合は、Salesforceでも削除されます。逆も同様です。
同期しない
- HubSpotとSalesforceの間でデータが受け渡しされることはありません。
- HubSpotで値が削除された場合も、Salesforceでは削除されません。逆も同様です。
フィールドタイプが一致しているか確認する
HubSpotとSalesforceのマッピングでは、双方のフィールドタイプが一致している必要があります。
例えば、HubSpotプロパティを「複数行テキスト」で作成した場合、Salesforceのフィールドタイプも「ロングテキストエリア」で作られている必要があります。
フィールドタイプが一致していない場合「互換性がありません」と表示され、同期中にエラーが発生する可能性があります。
フィールドタイプが異なる場合、フィールドタイプを合わせるか、新しく同期用のプロパティを作成してください。
HubSpotプロパティのフィールドタイプ |
Salesforceのフィールドタイプ |
---|---|
ドロップダウン選択/ラジオボタン
|
選択リスト
|
複数のチェックボックス
|
選択リスト(複数選択)
|
1つのチェックボックス
|
チェックボックス
|
数値
|
数値
|
単行テキスト
|
テキスト・テキストエリア
|
日付入力
|
日付・日付/時間
|
※Salesforceのフィールドタイプはこちらをご覧ください。
>カスタム項目のデータ型
※Salesforceの「参照」フィールドをHubSpotで以下の手順で同期する場合は、以下のナレッジベースの記事を参考にしてください。
>Salesforce 参照フィールドを同期
まとめ
日々さまざまなツールが増えていくなか、自社のデータをサイロ化させないためには、システム間の連携や整理がとても重要です。HubSpotとSalesforceの連携では、顧客情報を一元管理できると同時に、双方のツールの強みを活かせることが特徴ですので、まだ連携していない・導入を検討している場合は、この記事が参考になれば幸いです。
HubSpotの導入やHubSpotでのWebサイト構築、今回ご紹介したHubSpotとSalesforceの連携について、いつでもご相談を受け付けています。JBNにお気軽にお問い合わせください。
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