Webを使ったマーケティング活動のはじめかた

目次
Webマーケティングは、インターネット広告やSNSといった具体的な施策のことをまずイメージされることが多いようです。しかし、本来はマーケティング活動ですのでマーケティングの基本に則った活動でなければ思うような成果を出すことができません。では、見込み客獲得につながり、営業活動を支援するために必要なWebマーケティングとは何でしょうか?考え方や施策のためのステップについてまとめました。
Webマーケティングとは?
WebサイトやWebサービスにより多くのユーザーを集客し、自社の製品やサービスの購入を促すための活動のことです。セールス活動は、商談から受注に結びつけるまでを担いますが、マーケティング活動は、見込み客を集め、定期的に接点を持ち、精度を高めてニーズを見極め、商談を作るまでを担います。
インターネットが普及した現代では、Webを使った集客はとても効果的です。Webマーケティングは、データがすべて数値化できるので、施策が打ちやすく、また改善もしやすいという特徴があります。
Webマーケティングはすぐに実践できるわけではありません。誰にどんな情報を届けるのかを考えるのはもちろんのこと、情報を配信するためのプラットフォームの準備や適切な施策の選定、体制などを整えるために準備をする必要があります。
①目標達成や問題解決を支援する相手を明確にする
マーケティング活動を行っていくためにまずやらなければならないのは、自社がどのような問題を抱えているユーザーの支援をするのかを明確にすることです。そのためには自社の社会的役割を明確にし、自社の理想的な顧客となるペルソナを確定し、ペルソナとの情報の格差を理解していく必要があります。
自社の社会的役割を明確化する
自社は、どんな悩みを持つ人の、どんな解決策となる製品やサービスを提供するためにあるのでしょうか?自社が社会にどんな影響をもたらす存在なのか、自社の社会的役割を明確化することが必要です。自社のサポートを必要とする人たちに、自社の存在を知ってもらうためにも、自社がどのような目的で設立したのかをしっかりと理解する必要があります。そうすることで、顧客となりうるユーザーのニーズを捉えることができます。
ペルソナの設定
顧客の視点に立った製品やサービスの提供をするためにペルソナを設定する必要があります。ペルソナとは「理想的な顧客の人物像」のことです。年齢や性別、職業などのデモグラフィック情報に加えて、性格や趣味・価値観・ライフスタイルなどのサイコグラフィック情報までくわしく設定します。社内に共通の顧客像ができあがることによって、顧客への理解が深まり、顧客の視点に立ったコンテンツの作成ができます。また、社員全員で同じ目標に向かって取り組みやすくなります。
バイヤージャーニーの検討
バイヤージャーニーは、見込み客が自ら積極的に製品やサービスの調査を行いながら購入へと至るためのプロセスのことです。バイヤージャーニーを検討することで、見込み客の状態を「認識段階」「検討段階」「決定段階」という3つの段階に区別できます。
3つの段階に区別することで、情報の「送り手」と「受け手」との情報の格差を理解できます。「受け手」がバイヤージャーニーのどの段階にいるかによって、求める情報やチャネルは異なるため、一度にたくさんのコンテンツを提供するのではなく、興味や関心に合わせて、徐々にコンテンツを提供していきます。そうすることで、見込み客が意思決定の次の段階へ進む後押しができます。
②調査を行い、情報ニーズを捉える
ペルソナとバイヤージャーニーを設定したら、設定した人物像や段階に合わせ、その人たちのニーズを捉えるために調査を行います。
アクセス解析調査
アクセス解析調査は、自社のサイトの訪問者がアクセスする際に使用したキーワードや、アクセスを集めているページ、また、SNSや自然検索など、どのチャネルを使って自社のサイトにアクセスしたのかがわかります。
キーワード調査
自社の製品やサービスが検索エンジン上でどんなキーワードで検索されているかを知ることができます。自社の製品やサービスを求める人たちが、どんな問題を抱えているのかを判断するうえでのヒントとして役立ちます。ニーズを知ることは情報をユーザーに届けるときに重要になります。
キーワードを調査するためのツールとして、以下のものがあります。
・キーワードプランナー
キーワードの月間平均検索ボリュームや、競合性を確認できます。
・Googleトレンド
GoogleやBingなどに表示される検索予測のキーワードの取得に加えて、画像検索やニュース検索などのトレンドも調べることができます。
インタビュー調査
実際に製品やサービスを使用した人を6人程度集めて、調査テーマについて質問を行い、自由に発言してもらうことで、さまざまな意見や情報を収集します。グループインタビューで具体的なエピソードやその時の行動を聞くことで、ユーザーの心理や行動など、定量調査では把握しきれない詳細な部分を明らかにすることができます。
アンケート調査
アンケート調査は顧客が自社の製品やサービスを必要とした理由を知るために行います。webでの調査が中心となるので、短時間で実施でき調査結果もすぐにわかるので、効率的な調査ができます。
競合調査(他サイトのニーズの満たし方)
競合サイトがユーザーに提供している情報は何かを調べることができます。
競合製品はユーザーの問題解決をするために、製品やサービスの購入前にどんな情報を提供しているのかを知ることができるので、情報ニーズを捉えるために有効です。
③届ける相手を整理する
情報ニーズを捉えたからといって、情報を届けることはできません。まずは自社で管理する顧客情報や名刺情報を用いて、今後のマーケティングの対象となる顧客を整理しましょう。
1.顧客の属性情報を定める
例えば、30代の男性向けにキャンペーンのメルマガを配信したいときには、年代と性別にセグメントする必要があります。このように、情報を届ける顧客に応じて、必要な属性情報を定めます。
2.顧客データを整理する
ペルソナで定めた顧客の属性や情報をもとに、Excelなどで顧客データを整えます。
▽(イメージ)顧客データの整理
ここに属性を記入します | 姓 | 名 | 性別 | 都道府県 |
ここに属性を記入します | 山田 | 太郎 | 男 |
東京都
|
ここに属性を記入します | 佐藤 | 花子 | 女 | 神奈川県 |
3.顧客データをインポートし、セグメントリストを作成する
整理をした顧客データをCRMにインポートします。また、属性別にセグメントリストを作成しておくことで、この後のWebマーケティングですぐに活用できます。
CRMに顧客情報をインポートして整理する
マーケティング対象となる顧客を整理したら、顧客情報をCRMにインポートし、自社の製品やサービスへの購入意欲を高めるために、顧客に応じたアクションをとります。
CRMとは顧客との関係を管理できるツールです。顧客のWebサイト上での行動履歴や自社で配信したメールマガジンの開封率、自社スタッフとのメールのやりとりなどが蓄積されます。
Excelなどのローカル環境で管理されていた顧客情報をCRMで管理することで、CRMに登録された顧客の情報や行動を自社スタッフ全員で把握でき、俯瞰して確認できるようになります。顧客の行動履歴などが把握できるため、顧客の興味・関心にあわせたコミュニケーションや提案が実現できます。
ライフサイクルステージで顧客の段階を把握する
顧客の情報ニーズに応じ、適切な情報を提供するために、ライフサイクルステージを使用し、顧客の段階を把握します。
ライフサイクルステージとは、ユーザーの状態を自社が規定した顧客の段階ごとに把握し、発信者側の管理目線で顧客の段階を定義することです。
ライフサイクルステージは以下の7つの段階に分けられます。
・サブスクライバー
ブログやメルマガの購読者のような、定期的に情報を受け取るために個人情報を登録した人たちのことです。
・リード
E-bookなどのダウンロードコンテンツをダウンロードしているような、サブスクライバーよりも興味を示している状態のことです。
・MQL
リードよりも興味を持っていて、マーケティング部門から営業部門に引き渡すべきと判断された見込み客のことです。
・SQL
マーケティング部門から引き継いだMQLを精査したうえで、営業部門が直接アプローチするに値すると認められた人たちのことです。
・オポチュニティ
最終的な購入はしていないものの、打ち合わせ済みで導入が近い段階のことです。
・カスタマー
自社の製品やサービスの購入をした顧客のことです。
・エバンジェリスト
自社の製品やサービスのファンで、周りの人にも自社を紹介してくれる顧客のことです。
収集したユーザーの情報からライフサイクルステージを設定することで、自社の製品やサービスに対する関心や購買意欲の違いを区別することができます。区別することで段階に合わせたマーケティングを行えます。
④マーケティング施策一覧
誰にどんな情報を提供するのか決定でき、その顧客をCRMに格納したら、例えば「問題や悩みを認知した状態の見込み客を検索エンジン経由で集めたい」というように、明確に目標を定義し、目標を達成するために必要なマーケティング施策を選びます。
マーケティング施策には次のようなものがあります。
▽マーケティング施策一覧表
マーケティング施策一覧表
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メリット
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デメリット
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コスト
(初期費用)
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難易度
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成果までの期間
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対応する顧客ステージ
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メールマーケティング
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見込み客と接点を持ち続けることで、リピートの獲得につながる
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見込み客ごとに応じたコンテンツを作成するのが難しい
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○
中
|
○
中
|
すぐ〜1年
顧客の整理がされていればすぐに結果を見ることができるが、整理されていない場合は顧客の整理から入るため
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検討ステージ
・
決定ステージ |
SNS運用
|
・企業やサービスの認知度を高められる
・消費者の意見を直接聞ける |
認知度を高めるためにはフォロワーを獲得する必要がある
|
◎
低
|
◎
低
|
1年〜2年
フォロワーを獲得しなければならないから |
認識ステージ
|
ウェビナー
|
場所や人数に制約がなく、幅広い集客ができる
|
・集客の仕組みが確立されていない企業では参加者を集められない
・セミナー運用のノウハウが必要 |
◎
低
|
○
中
|
6ヶ月〜1年
セミナーの運用のノウハウがない場合は時間がかかるセミナー内容が整わないと実施ができない
|
認識ステージ
・ 決定ステージ |
コンテンツSEO
|
コンテンツが資産として蓄積される
|
定期的なメンテナンスが必要
|
◎
低
|
△
高
|
6ヶ月〜1年
コンテンツがある程度揃わなければ効果が出ない |
認識ステージ
|
インターネット広告
|
・顕在層に訴求できる
・広告を出し続けている期間は効果あり |
・コストが高い
・広告の掲載をやめると効果が無くなる |
△
高
|
◎
低
|
すぐ
配信するターゲットが明確なら、ユーザーを惹きつける広告を発信できる |
認識ステージ
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マーケティングオートメーション
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顧客のオンライン上の活動を追跡し、解析、可視化できる
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・継続してコストがかかる
・システムを使いこなすのが難しい |
△
高
|
△
高 |
6ヶ月〜1年
マーケティング対象となるユーザーに対して、何を行えば自社の製品やサービスの購入に対する検討ステージが上がるのか、シナリオを設計する必要がある |
検討ステージ
・ 決定ステージ |
メールマーケティング
自社のWebサイトを訪れ、個人情報を登録したユーザーにメールを送り、コミュニケーションを図ります。この時にユーザーの行動履歴や個人情報に合わせてメールを送り、一人ひとりに最適な情報を提供します。
SNS運用
自社の宣伝活動をするためにSNSを運用します。SNSを活用することで多くの人に自社の製品やサービスを知ってもらうきっかけになります。影響力のある情報発信には、「いいね」やリツイートの機能でユーザーに拡散され、拡散力を活かしたコンテンツの配信ができます。クチコミから多くのユーザーに自社製品やサービスの良さを広めることもできます。
ウェビナー
オンライン上で行われるセミナーのことです。一般的なセミナーとは違い、開催場所を設ける必要がなく、人数の制約もないため、集客の幅が広がり低コストで取り組めます。
コンテンツSEO
自社の製品やサービスをまだ認識していない潜在顧客に認識してもらうために、ブログなどの自社コンテンツを、検索結果の上位に表示されるようにして、自社サイトへの流入を増やすための手法のことです。
一度作成したコンテンツは公開するとweb上に蓄積されていくので、削除しない限り永久的に検索エンジン経由での見込み客の集客ができます。
インターネット広告
Web上に掲載される広告のことです。目的に合わせて、年齢や居住地などでターゲットを絞った的確な広告の掲載が可能です。ターゲットが明確になっていれば、すぐにユーザーを惹きつけることができます。
マーケティングオートメーション
マーケティングオートメーションとは、マーケティングを自動化する仕組みのことです。メールマガジンなどの配信で見込み客の開封率や反応を見て、ニーズの成熟度を測ってターゲティングしていきます。また、ターゲットに送るコンテンツやタイミングを設定し、顧客の購買行動を想定して製品やサービスの購入に至るまでのシナリオを設定することで、想定した顧客の行動に合わせて、自動的にコンテンツを提供できます。
⑤マーケティングを行う体制
マーケティング施策を行うためには体制の構築が必要です。マーケティング活動はとりわけセールス活動との連携が必要になるため、営業セクションの内部で立ち上げるのが理想的です。
マーケティング施策の統括者
多くの場合、担当役員や営業部統括がこの役目を担います。営業活動と照らしあわせ、自社にとって適切なマーケティング活動とはなにか? 目的を設定したり、営業目線でペルソナ、バイヤージャーニーなどの策定を行います。
マーケティング施策担当者
マーケティング施策のディレクションを行います。リードやMQLを安定的に創出するためにどんなマーケティング施策が必要であるか考えます。施策を決めたら、実施のためのスケジュールやリソースの管理を行います。
CRM・MAシステム担当者
システム設定やCRMの管理、レポート設定を行います。Webサイトへの訪問者を見込み客に変換し、営業チームにスムーズに引き継げるよう、チームに適したグラフ化したレポートをもとにマーケティング活動に役立てます。
コンテンツ制作担当者
マーケティングコンテンツの制作を行います。ユーザーにとって最適なコンテンツを提供するために、設定したペルソナ・バイヤージャーニーに基づきコンテンツ作成を行います。
HubSpotを使用したマーケティング活動
上記施策をHubSpotを活用することで実現できます。
HubSpotはマーケティング活動を行うためのプラットフォームです。従来では、複数のシステムを使って⾏ってきたマーケティング作業を、1つのシステム内で簡単にマーケティング作業を⾏うことができます。
HubSpot内のソフトウェアであるmarkething Hubは、マーケティングに必要なツールやデータを1箇所に集約できます。ターゲットとなるユーザーを惹きつけ、見込み客へ変換し、マーケティングの実績を分析してレポートを作成するために必要な機能が全て揃ったマーケティングソフトウェアです。
HubSpotを活用したマーケティング活動で実現できる機能は、以下のものがあります。
ユーザーを集める
- ブログ(ブログ作成をスムーズに行い、良質なコンテンツを作成)
- SEO (検索結果で競合他社よりも上位を目指す)
- 広告のトラッキングと管理(広告キャンペーンを一元管理)
- ソーシャルメディア管理(ターゲットを見極め、関係性を築く)
- 動画(動画を活用したコミュニケーションにより強固な関係を築く)
- ウェブチャット(チャット機能をwebサイトに組み込む)
ユーザーを見込み客に転換する
- ランディングページ作成ツール(ユーザーに合わせてパーソナライズされるランディナグページを簡単に作成)
- フォーム作成ツール(問い合わせや見込み客の情報登録に活用できるフォームを簡単に作成)
- MA(効率化とビジネス成長を実現するワークフロー)
- Eメールマーケティング(送信する相手に合わせてEメールを自動でパーソナライズ)
- ABM(ABM戦略を簡単に行うことができるツール)
- リードのトラッキングと管理(あらゆるユーザーの記録を一元管理)
レポートとカスタマイズ
- マーケティングアナリティクス(全てのマーケティング活動を1箇所で測定する)
- カスタムオブジェクト(データを自由自在に活用する)
- selesforce連携(リードの詳細情報を営業チームと共有する)
