Webマーケティングの導入・定着と人事評価制度

Webマーケティングの導入・定着と人事評価制度

目次

マーケティングを仕組み化して企業活動に取り入れられるケースが中小企業にも広まりつつあります。この背景にはWebが大きく関わっていることは間違いなく、Webマーケティングを業績に結びつけている事例が増えてきました。
その一方でWebマーケティングの仕組みを取り入れてみたものの、社内浸透がうまくいかず停滞したままというケースも多く見聞きします。Webマーケティングが組織に根付かない原因はさまざまなものがありますが、その中でも「営業部門がブレーキになってしまった」という声は少なくありません。
本来であれば企業の営業活動を効率化させ、成果を出しやすくするためのマーケティング活動の推進で、その成果を真っ先に享受する部門が障害になるとはどういうことなのでしょうか。
本稿では、営業部門が関係するこの現象を人事評価制度との関係に着目して考えてみたいと思います。

※ここで想定しているのは、マーケティング業務が完全には分化しておらず、それを主として営業部門が兼務しているような組織です。したがって本記事中での「営業」の定義は、ターゲット層を設定しての見込み客獲得のための活動から受注までの幅の広い範囲を指します。実際、中小企業の多くはこのケースに当てはまるでしょう。

営業部門の特性

営業部門は「実績」が数値で確認しやすく、人事評価においても実績数値の影響を大きく受けるのが特徴です。人事評価は通常、実績評価、能力評価、情意評価を組み合わせて行われることが一般的で、その組み合わせ方は企業により様々ですが、営業の場合は実績数値と反比例する評価は現実には難しくなります。報酬に直接的な実績連動部分が含まれているケースも少なくありません。
こういった点も含め、一般的に言われている営業部門の特性をあげてみましょう。

1. 実績の影響を強く受けやすい人事評価

前述した通りですが、一口に実績数値と言っても、「営業成績」と「プロセス数値」に分けることができ、そのほかに自己目標に対する達成率など、「売りさえすればいい」という風潮にならないようさまざまな工夫がされたりします。とはいえ、多くの場合営業成績が高い人ほど評価が高くなりやすいのは言うまでもありません。

2. 競争原理がはたらきやすい

多くの営業部門では、多かれ少なかれ組織内の「競争原理」がモチベーションの重要な一要素として機能しています。実績が数値として客観化しやすいことが主な理由ですが、グラフを壁に貼るような見える化はされていないとしても、心理的に競争原理がはたらきやすく、それは通常ポジティブな側面として肯定されています。

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3. リーダーの成功体験が反映されやすい

営業部門のリーダーは過去の実績を上げた人がより上席を占めることが普通です。つまり上席に位置する管理職はより実績を上げた人(=今までの手法での成功体験の多い人)、となるケースが多いということになります。

このような特性を持つ営業部門では、個人の能力・努力=実績(営業成績)=評価、と直線的に捉えられやすく、この傾向はWebマーケティングを社内に浸透させていく上で考慮しておく必要があります。

Webマーケティング導入における営業部門の人事評価

Webマーケティングを企業に取り入れるということは、多くの企業にとって経営上極めて大きな戦略的転換にあたります。さまざまな新しい考え方や仕組みが、組織横断的に導入されたり改変されたりしていくことでしょう。こうした場合、現場のフローや管理の仕組みを作り上げる前提として「意義と方向性の共有」と「働く人の評価指標の再構築」が必要になります。

新しい取り組みがなぜ必要なのかを全社的な視点から共有する「意義と方向性の共有」は当然として、見落とされがちなのは「人事評価指標の再構築」です。
言うまでもないことですが、人事評価指標は必ず会社の方向性や価値基準と同期していなければなりません。評価指標を改変することは、その企業が新しい方向へ邁進することの覚悟を全社員に示すことでもあります。

単に「いま、我が社はこの新しいやり方が絶対必要だから、会社のためだから、みんな頑張って変えていこう」と、その意義によりかかった〝べき論〟を前面に出すだけでは組織横断的な連携が難しくなる恐れがあります。特に、マーケティングやセールスというフロント業務においては営業部門という中核組織があって、前述したように日々目標数字を背負いながら活動し、構成メンバーの人事評価には個人の営業成績が強く反映されているからです。

Webマーケティングは、企業が全体としてマーケットに向き合い、最大効率で成果を引き出していこうという取り組みです。したがって個々人の属人的特性を加味しながら業務を組み立てることは、本来的には想定されていません。
受注というゴールだけを重視するのではなく、組織的に行うリードの獲得やコンテンツの生成に意味づけをし、そこへの関与を評価という形で示していかなければ「耳ざわりの良い掛け声だけで人を動かす」ということになりかねません。そうすると初期段階で勢いをつけられなかったり、長く続かなくなる可能性があります。

「会社への貢献度」の価値を転換する

以上のように述べてくると、インセンティブ制度に象徴されるように、営業は報酬と結びつかないと動かない、という意味に解釈される方もいるかもしれませんが、それは違います。
通常、従来型の営業部門では受注という最終数値が最もわかりやすい「会社に対する貢献度」とされていますから、それが直接的にモチベーション(あるいは誇り?)の源泉となっているだけなのです。人事評価指標の再構築は、自社にとって「会社への貢献とはそもそも何なのか」という考え方の再構築と言ってもよいでしょう。

冒頭でお話ししたように、新しいマーケティング活動に舵を切った時に営業部門がブレーキになるようなケースは実際にあります。そんな時に絶対にしてはならないことは、営業部門を〝古い体質から抜け出せない守旧派〟と見立ててしまうことです。
たとえ言葉に出さなくともそのような認識のまま、社命として新しい業務を強制しても成果に結びつくわけもありません。マーケティングの導入は大きな変革には違いありませんが、目指すべき目的地を変更するという意味での方向転換ではないからです。
目指すべき目的地はすでに共有されているはずです。そこに向かう新しいロードマップの構築に知恵を出し合うことが大切です。

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新しい人事評価指標は、既存の業務を分解し、新しい仕組みとの接点部分に注目しよう

Webマーケティング導入に伴って、どのように人事評価システムを変えていくかは会社により、また導入の状況により全く違ってきますので本稿では具体的に述べませんが、営業組織に関するポイントだけ触れておきましょう。
「人と人との信頼関係をつくる営業職だけは機械に置き換えることができない」といったことは古くからよく言われてきました。それは現在でも、そして未来においてもある側面では正しいのです。Webを活用したマーケティングオートメーション(MA)が注目されていますが、それとても何もしなくても自動的に注文が入ってくるシステムを指しているわけではありません。
ただ、Webマーケティングの場合、とりわけリード獲得の前後の取り組みの流れがWebの特性を最大限に利用できるよう設計され、従来型の営業手順とは大きく異なります。また、どのようなリードをマーケティングコンタクトと見なしてマーケティング活動をするのかといった取り回しは営業チームの知恵を結集したいところです。
このあたりの具体的な活動を再構築したうえで、どのポイントを評価指標として採用するのか、営業部門の納得いくまで話し合う必要があるでしょう。

従来の営業活動を分解して、システム化できるのはどの部分で、人間がやるべきなのはどの部分なのかを切り分けたり、それまで個人で抱えていた顧客情報を会社の財産として共有化すべきものと個人に止めおくものを仕分けるなどの一連の作業は、ステークホルダーと自社の関係性が本質に立ち返って整理されることになり、将来に良い影響を与えるのは間違いありません。

こういった整理を経て、最終的にはWebマーケティングの活用フローがそのまま人事評価基準と同期されるかたちが作れると理想的と言えるでしょう。

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