カスタマーサイトだけが空白地帯に。製造業におけるWeb戦略の盲点。

目次
こんにちは。JBNの稲田です。このページを読んでくださっているあなたは製造業、特に産業メーカーや工業系設備メーカーにお勤めのWeb担当者様だったりするでしょうか。またはWeb活用に悩む中小企業の営業部長や二代目社長だったりするでしょうか。もしそうだとしたらこのページを探し当ててくださってありがとうございます。もちろんそうではない方でも歓迎です。このページを読む5分間が皆さんのお役になったら嬉しいです。
Webサイトそれぞれの役割
製造業のWeb戦略について語る場合、真っ先に話題にのぼるのは企業サイトや製品サイトです。多くの企業にとってこれらはすでに整備済みであり、「Webサイトはもうあるよ。活用してるよ」と経営層や事業部長が仰る際はたいていこの2つを指しています。
中小企業における人材確保の難易度が上がったことで採用サイトの構築も進み、上場企業ではIRサイトも当然のように整備されています。また、営業強化の施策としてマーケティングサイト(リード獲得サイト)も少しずつ浸透してきました。
しかし、そのどれにも該当しない「ぽっかりと空いた空白地帯」があります。
それがカスタマーサイト(ログインが必要な顧客限定Webサイト)です。
製造業が持つWebサイト。その役割と顔ぶれ
Webサイトには様々な種類があり、それぞれ違う役割を担っています。会社の部署ごとに役割があるのと同じです。それぞれが「専門部隊」といえます。Webサイト別の役割を下記にまとめてみました。どれも日常的に見覚えがあるのではないでしょうか。
役割 | 主なターゲット | 主なコンテンツ | |
企業サイト (コーポレートサイト) |
企業としてのオフィシャルな情報を伝える。会社の「基本情報」と「最新情報」が中心。 | 見込み客 既存客 就職希望者 株主 パートナー企業 サプライヤー 地域住民 社員とその家族 |
会社情報 製品・サービス ニュース・IR情報 採用情報 サポート情報 お問い合わせ |
製品サイト (サービスサイト) |
主力製品やサービスを「売り込む」ためのショールーム。 | 見込み客 既存客 販売パートナー |
製品概要・特徴 詳細仕様・性能 導入事例・お客様の声 価格・購入方法 サポート・ダウンロード |
マーケティングサイト | 「まだ製品を知らない段階」から「製品を検討する段階」へと移行させるための橋渡し役を担う。 | 潜在客 既存客 業界関係者 |
課題解決型コンテンツ 技術コンテンツ 業界分析・トレンド 資料ダウンロード オンラインセミナー |
採用サイト | 採用活動の受け皿。自社にマッチする人材のフィルタリング。 | 新卒採用候補者 中途採用候補者 第二新卒・既卒者 潜在的な求職者 |
会社について 仕事について 働き方について インタビュー 募集要項 インターン 採用プロセス・イベント情報 インフォグラフィック |
IRサイト | 企業の経営状況、財務情報、事業戦略などを公開し、株主や投資家とのコミュニケーションを円滑にする。 | 個人投資家 機関投資家・証券アナリスト 金融機関(銀行など) 潜在的な投資家 |
財務情報 株式情報 IRイベント・カレンダー IRライブラリ 経営戦略・事業計画 ニュースリリース ESG・サステナビリティ情報 |
カスタマーサイト | ? |
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役割 | 主なターゲット | 主なコンテンツ |
既存客との関係深化を担う「カスタマーサイト」
ここからが本題です。企業にとって既存客は本来最上級に重視される存在です。
にも関わらずほぼ無視されている「カスタマーサイト」とは何か?
カスタマーサイトとは既存客に特化したWebサイトであり、自社製品やサービスの困りごとを解決し、満足度を高め、カスタマー(顧客)との関係をより深めるためのWebサイトです。
他のWebサイトが「うちの会社を知ってほしい」「新しいお客様を獲得したい」という狙いで作られているのに対して、カスタマーサイトは「製品を使っていただく利便性を向上したい。そのための場を提供すること」が目的となります。(カスタマーサイトの事例:三菱電機FAメンバーズ )
カスタマーサイトのコンテンツ例
役割 | 主なコンテンツや機能 | |
サポート・FAQ (よくあるご質問) |
顧客が抱える疑問や問題を迅速に解決するための情報ハブ。 | FAQ(製品別、カテゴリ別) 検索機能 |
ダウンロード (マニュアル・ガイド・各種資料) |
製品の基本的な使い方から応用までを網羅した資料を提供。 | 取扱説明書 詳細ガイド/リファレンス インストールガイド/セットアップガイド トラブルシューティングガイド ソフトウェア・ファームウェアダウンロード |
お問い合わせ・サポート窓口 | 顧客が直接サポートを受けられる手段を提供。 | お問い合わせフォーム 電話サポート チャットサポート サポートチケット発行システム(問い合わせ履歴の管理、進捗確認) |
採用サイト製品登録・保証情報 | 顧客が購入した製品を管理し、保証サービスを受けられるように情報を提供。 | 製品登録 保証内容 修理・交換サービス |
コミュニティ ユーザーフォーラム |
ユーザー同士が情報交換し、互いに助け合う場を提供。 | Q&Aフォーラム 情報共有 フィードバック収集 |
最新情報・お知らせ | 製品の重要なアップデートや情報を提供。 |
製品アップデート情報 サービス停止・メンテナンス情報 イベント情報 |
消耗品・部品購入 アップグレード |
製品の継続的な利用を支援し、追加収益に繋がるコンテンツ。 |
オンラインストア |
カスタマーサイトが「空白地帯」だった理由
製造業、特にBtoB向けの最終製品メーカーや設備メーカーのビジネス展開においてカスタマーサイトは今後欠かせない要素です。しかし、多くの企業がこの分野に未着手なのが現状です。まさにWeb戦略上の「空白地帯」です。考えられる理由をまとめてみました。
カスタマーサイトが空白地帯な理由
- カスタマーサイトという概念自体がまだ広く認知されていなかった
- 営業担当者中心のビジネスモデルと個別対応の慣習
- 「質問が来たら答える」という認識のまま止まっている
- 社内のリソース不足(Web活用の人員を育ててこなかった)
- 既存システムとの連携が困難(顧客管理システムや基幹システム)
なぜカスタマーサイトが必要なのか?
前述したようにWebサイトは多岐にわたりますが、カスタマーサイトは空白地帯です。これはまではそれでよかったのですが、社会やユーザーの意識が変わり、「あればなお良し」ではなく「なくてはならない」の領域に近づいています。顧客側の意識や行動、企業に求めることが変化しています。
カスタマーサイトが必要な理由
- 顧客側の「自己解決志向」の高まり
- 製品サイクルの長期化とLTV(顧客生涯価値)の重視
- 顧客満足度とロイヤルティ醸成による営業効果
- 顧客の反応・フィードバックを可視化し、社内で共有する
- 営業リソースの最適化と効率化(顧客データの収集と分析)
顧客との関係性を強化する「営業的インフラ」
製品購入後のバリューを最大化するためには丁寧なサポートが必要です。製品やサービスの活用シーンにおける利便性や迅速性をカスタマーサイトが提供し、顧客満足度の向上に貢献します。製品を導入した「その後」のビジネスを積極的にサポートし、顧客との関係性を強化する「営業的インフラ」ともいえます。
カスタマーサイトの具体的な活用方法
顧客の「困った」を「便利」に変える
では、実際にどのように活用すべきでしょうか? 顧客の「困った」を放置せず、すぐに解決することで「便利」を提供することがカスタマーサイトの譲れない方針です。顧客の困ったを便利に変えることで、「この会社は自社に必要なパートナーである」と感じていただくこと。それが重要なミッションです。
1. 徹底した「自己解決支援」の仕組み。お客様の「困った」をすぐに解決
顧客が「困ったな」と思った時にまず訪れていただく場所がカスタマーサイトです。電話やメールで問い合わせる前に顧客自身で問題を解決できるようなコンテンツを充実させましょう。お客様が自分で解決できた時の利便性はそのまま御社への信頼感に繋がります。
- 網羅的なFAQ(よくある質問)
- 詳細なトラブルシューティングガイド
- 最新の取扱説明書・技術資料のダウンロード
- 製品ごとのナレッジベース(知識データベース)
2. 製品活用を促進する「価値提供型」コンテンツ。「なるほど」を届ける
製品を導入しただけで真の価値を最大限に引き出せるとは限りません。カスタマーサイトを通じて製品をより効果的に効率的に活用できる情報を提供して、「なるほど、試してみよう」と思っていただくことが重要です。顧客のビジネスをさらに良くするための「ヒント」を提供しましょう。
- 具体的な導入事例・活用事例
- 「〇〇を効率化するコツ」「生産性を向上させる秘訣」といったノウハウ記事
- 専門家による技術コラム
- 動画コンテンツの充実
3. 「継続的な接点」と「パーソナライゼーション」。一人ひとりの顧客に寄り添う
製品を購入して終わりではなく、顧客との継続的かつ有意義な関係を築き、一人ひとりに合わせた情報提供が大切です。「この会社は自社に必要なパートナーである」と顧客に感じていただくことがカスタマーサイトの重要なミッションです。
- パーソナライズされた情報提供
- 定期的なメールマガジンやニュースレター
- 顧客アンケート・フィードバックの取り組み
4. 営業・サービス部門との連携と業務効率化。越境して「顧客満足」を最大化
カスタマーサイトは単独で機能するものではありません。営業部門やサービス部門と密接に連携し、情報を社内共有することが顧客満足につながり、業務効率化にも貢献します。
- 問い合わせ経路の整理と自動化
- チャットボット・AI活用
- 営業担当者への情報共有
- 部品注文や修理受付のオンライン化
カスタマーサイトはビジネスを加速させる強力な戦略ツール
これらの活用方法を組み合わせることでカスタマーサイトは単なるWebサイトではなく、ビジネスを加速させるための強力な戦略ツールへと変貌します。それこそが顧客との関係性を強化する「営業的インフラ」です。
とはいえ、ビジネスに役立つカスタマーサイトはただ作ればいいというものではありません。CRM(顧客関係管理)を軸とした多岐に渡る機能が必須となります。カスタマープラットフォームの代表的プロダクトである『HubSpot』でカスタマーサイトを構築することをJBNでは推奨しています。
なぜHubSpotが最適なのか?
「空白地帯」を「宝の山」に変えるHubSpot
カスタマーサイトを構築してしっかり運用していくためには単にWebサイトを作るだけじゃなく、顧客情報の管理、コンテンツ制作、マーケティング活動、営業部門やサービス部門との連携など、たくさんの設計や機能が必要になります。この点においてHubSpotが最適であり、その真価を発揮します。
HubSpotはCRM(顧客関係管理)を軸とした統合プラットフォーム
HubSpotの最大の特長はCRM(顧客情報管理)を軸に、マーケティング、営業、カスタマーサービス、CMSといったお客様との接点を全部まとめて提供してくれることです。これ、実はすごいことです。
これまで、マーケティング担当はメルマガ配信ソフトを使い、営業部は顧客情報をExcelで管理し、サービス部門はまた別のシステムで問い合わせに対応し、Webサイトは外部の制作会社に依頼して…と、それぞれの部署がバラバラのツールを使っていませんか?
情報が断片化し、部署間の連携は機能せず、「同じ顧客から同じ質問が何度も来てしまう」「顧客の過去の問い合わせ履歴を知らないまま営業訪問してしまう」なんて非効率な状況が現場で起きていませんでしたか?
HubSpotはそれら課題を一掃できます。
Marketing Hub
メールマーケティング(製品アップデート情報、メンテナンスの通知など)など、顧客をWebサイトに呼び込み、興味を持たせるためのマーケティング活動を一元的に管理できます。
Sales Hub
既存客の情報を管理して、営業担当が顧客とのコミュニケーションを効率的に行えるよう支援します。顧客のサイト閲覧履歴や問い合わせ履歴なども自動的にCRMに蓄積。営業担当は「このお客様は最近この製品のFAQをよく見ているな」といった情報を把握した上でより寄り添った営業アプローチや製品提案が可能になります。
Service Hub
顧客からの問い合わせ管理(チャット、メール、電話、チケットシステムなど)、FAQ(よくある質問)ページの作成、ナレッジベースの構築、お客様アンケートなど、カスタマーサイトにおける顧客サポート機能を担当します。顧客の自己解決を促し、サポートチームの負担を軽減します。また、お客様からの問い合わせを可視化して、対応状況をリアルタイムで共有することで、「あの件どうなってる?」といった無駄なやり取りがなくなります。まさに顧客対応の「見える化」です。
Content Hub
専門知識がなくてもブロックを組み立てるように、簡単にWebサイトの構築や更新ができるCMS機能です。ドラッグ&ドロップ操作でページを作成したり、豊富なテンプレートを活用することで、Web制作の専門家がいなくても柔軟にサイトを運用できます。セキュリティやパフォーマンスもHubSpotが管理してくれるので安心して運用に集中できます。
「顧客を待たせない」「顧客を不安にさせない」
HubSpotはこれらの機能がまるで歯車のようにシームレスに連携しています。
「顧客を待たせない」「顧客を不安にさせない」といった質の高い顧客体験を提供するプラットフォーム。それがHubSpotです。顧客にとって大きな安心感となり、企業に対する信頼感を高めることに繋がります。
まとめ
カスタマーサイトとHubSpotでかつての「空白地帯」を「パートナーシップ」の拠点へ
製造業様が生み出している製品や技術力は長年培ってきた「信頼」の証であり、揺るぎない強みであることは言うまでもありません。それは日々生み出される存在意義そのものです。それをより深く、強くお客様に届け、実感いただくためにカスタマーサイトが必要になります。
これまで「空白地帯」だったカスタマーサイトは単なる情報提供の場ではありません。お客様に製品を満足して使い続けていただくための「パートナーシップの拠点」です。
HubSpotはカスタマーサイトの構築・運用を強力に支援し、マーケティング、営業、カスタマーサービスを一つのプラットフォームで統合します。まさに顧客との「パートナーシップ」を築くための最適ツールなのです。
御社の強みを最大限に引き出し、新たな顧客体験を創造する
あらゆる面においてデジタル化の波はもはや避けられません。しかし、顧客との関係性をこれまで以上に深め、ビジネスを加速させるための大きなチャンスでもあります。
これを機にカスタマーサイトの具現化とHubSpotの導入をぜひ検討してください。
御社の強みを最大限に引き出し、新たな顧客体験を創造する一助となれば幸いです。
御社の挑戦を心から応援しています。
稲田英資(マーケティングディレクター)
Web活用の支援を担当し、お客様の事業や営業活動に貢献するWeb活用をサポート。
製造系BtoB企業様のWeb活用に特に注力しています。