【スタッフコラム】BtoBのWeb活用で頻出するコンテンツ書けない問題

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Kuper09Q_400x400JBNスタッフのリレー形式でコラムをお届けするスタッフコラムです。

稲田英資(マーケティングディレクター)
Web活用の支援を担当し、お客様の事業や営業活動に貢献するWeb活用をサポートしています。( 稲田のTwitter 、日報note

こんにちは。JBNの稲田です。東京の大学を卒業してそのまま小さな広告代理店に入社し、主に雑誌広告の企画や営業を学びました。結婚を機に地元出版社に転職して広告営業や雑誌編集を経験し、今は株式会社JBNでWeb制作やWeb活用支援を担当しています。担当する業界は製造業や機器メーカーといったBtoBのお客様が特に多く、HubSpotを活用したBtoBマーケティング支援に注力しています。

コンテンツ書けない問題

前回のコラムでは「Webからの新規受注を増やしたい」は大いなる勘違いであると書きました。Webサイトに訪れたユーザーが求めているのは「信頼できる相談先」としての企業姿勢です。その期待に応えるべくBtoB企業はあらゆる受注源泉をコンテンツ化し、相談獲得のための期待醸成を目指す必要があると書いたのが前回コラムです。

「なるほど、よくわかった。じゃあ、コンテンツを作ってみよう」と思っていただいた次のステップでぶつかるのが「コンテンツ書けない問題」です。まあ、たいていの企業様は書けません。驚くほど。ぜんぜん書けない。

ここで多くの方が「書けないのは書くスキルに問題があるからだ」と勘違いしてしまい、さらにスパイラルに陥ります。本質的な問題は書くスキルではありません。社内構造です。(Web活用に必要なコンテンツは製品紹介や成果事例、ダウンロード資料、SNSや配信メールに動画や音声メディアなど多岐に渡りますが、ここでは一般的なWebページに限定してお話しします。本質的な課題はどれも同じです)

なぜ書けないのか?

  • 書き手がいない
  • 書く文化がない
  • 書く人を評価する社内制度がない

コンテンツ書けない問題は上記がほぼ要因です。上記3点はからみあって存在しています。なぜコンテンツが書けないのかといったら、社内に書き手がいないからであり、なぜ書き手がいないのかといったら社内に書く文化がないからであり、なぜ文化がないのかといったら書く人を評価する社内制度がないからです。

別にこれは普通のことです。悪ではありません。だって、これまではその必要がなかったんですから。ただ、時代や社会が大きく変わり、事業推進や課題解決にWebを活用するならば必要になってしまいました。社内の書き手も書く文化もそれを評価する制度も。「コンテンツ書けない問題」はスキルの話ではなく、時代変化に追いつけていない社内構造の話です。それが中小企業の現状だと思います。

必要なのは体質改善

書けない理由を源流まで遡って考えると「書けない会社のままだから」となります。企業としての変化が必要なのにそれには触れず、それっぽいノウハウを現場に導入して「ターゲットを決めましょう」「コンセプトを決めましょう」とやっても上手く機能しないのはここに原因があります。つまり、必要なのは体質改善です。「書けない会社」から「書ける会社」に変化することが遠回りのようで本質的な解決策です。

じゃあ、書ける会社になるために一番手っ取り早い方法は何か?
行動できる人が行動するのが一番です。
それは社長であり、役員であり、営業部長や技術部長や総務部長ですよね。もちろん。

自分たちが変われてないのに、部下にだけ「変われ」なんてオーダーするくらいなら「書ける会社になろう」という目標はやめた方がいいと思います。

社長、役員、営業部長、技術部長、総務部長、どなたでもいいので書いてください。月に一本は必ず。
(実際、ぼくはそういうオーダーをよくやります)

それを一年続けたら、書けるようになっています。というか、書ける会社の社風になっています。それはつまり、「書いたら怒られるんじゃないか」「チクチク添削されるんじゃないか」「評価もされないのに書くだけ損じゃないか」という社内の硬直した心理を払拭できた状態です。それがすごく大切です。主たる目的は「書けない会社」から「書ける会社」に体質改善することですから。

「コンテンツを作れる人」を社内で発掘していくために

「なぜ上層部が書かないといけないんだ。実務は現場でいいだろう」という声が聞こえてきそうです。いいんです。もちろん。書く人がいれば。でも思い出してください。社内に書き手がいないことが問題でしたよね? そして、書き手がいないのは「書く文化がない」からでしたよね? コンテンツを生み出す姿勢を是とする環境が社内にないのに「今日から評価します。いっぱいコンテンツ作ってね」なんて急に言っても誰も信用しません。ぼくだったらしない。

これから多くの企業は「コンテンツを作れる人」を社内で発掘していく必要があります。向いている人にやってもらうのが一番なので。もしからしたらそれは経理の若手Aさんかもしれないし、技術一筋30年のBさんかもしれません。でも、今の評価制度でそれを見つけられるでしょうか。まず無理です。TOEICの点数で料理上手な人を見つけるようなものですから。

会社として社内の才能やコンテンツへの熱意を見つけられないなら主体的に手を挙げてもらう必要があります。そのためには評価制度が必要です。でも、制度設計には時間も労力もかかります。その効果が現れるのは半年後や一年後です。中長期的な準備を進めつつ、今すぐできることは社長や役員や営業部長や技術部長や総務部長が自らコンテンツを作ることです。社員の皆さんに「自社は本当にWeb活用に前向きになったんだ」「書くことを是とする姿勢を対外的にも示すようになったんだ」「自分が関わってもいいんだ」と信じてもらえたらこれは強いです。日々の仕事からコンテンツが生まれるようになるかもしれません。

目指すべき姿と上層部の役割

目指すべきは社員の皆さんがコンテンツメーカーになることです。社長も開発者も営業部長も営業ルーキーも工場長も経理も総務も購買担当も執行役員もベテラン職人も。100人いたら100人の視点があるはずですから。(実際、入社したてのルーキーだって彼ら彼女らならではの視点の宝庫のはずです)

それぞれの立場、それぞれの業務から見た「自社のバリュー」が集まってきたらこんなに強いことはありません。実際にコンテンツにするかどうかは別途検討するにしても、自社コンテンツに重要なことは多様な立場、多様な角度、多様な顧客接点からの視点の確保です。トピックとエピソードの収集です。編集者の視点ともいえます。

最悪なのは上司に向けて作られたコンテンツです。Webコンテンツの有益性を決めるのは上司ではありません。ユーザーです。その意味で社内の誰も答えを持っていません。たとえ社長や部長でも。あるのは仮説です。その仮説に答えを出してくれるのが顧客です。Webコンテンツでぼくたちがやれることは仮説を立てて顧客に渡して評価してもらうことです。それなのに、「コンテンツを発信してよいかジャッジする」という謎の役割を上司が担っているのは珍しくありません。事実確認やコンプライアンスのチェックならまだ意味はありますが、せっかく書いていくれた記事に対して「評価者」のような態度で接するのは百害あって一利なしです。多様な視点、多様な角度を潰しています。あなたの意に沿うものが正解ではありません。上司がやるべきことはジャッジではなくより良いコンテンツになるためのサポートであり、そのための環境整備です。そして、良いコンテンツとは「ユーザーの役に立つこと」です。

あなたの会社の社員が100人いたら100人それぞれの立場でユーザーの役に立っているはずです。ユーザーの役に立ち、地域の役に立ち、社会の役に立っているはずです。日々、毎日。「それをコンテンツにすればいいんだ」と社員全員で気づけたらこんなに強いことはありません。コンテンツのために改めて何かしなければいけないのではなく、自分たちのバリューを形にして伝えることがコンテンツです。社内や上司を見るのではなく、ユーザーを見て形にすることが良いコンテンツです。

でも、誰だって社内や上司を気にしちゃいます。それは仕方がない。
権威勾配のメカニズムが人間の集合体であり組織なんですから。
じゃあ、それを払拭できるのは誰か? 社長や役員、部長に決まってますよね。

というのがぼくの持論です。
社内文化を新しく創造すると考えたら当然の役割だとも思います。

書ける会社と生成AIの関係性

「書ける会社になるために」を前提に長々と書いてきましたが、生成AIの普及で色々な変数が大きくなっています。先に「Web活用が必須な時代に変化した」と書きましたが、もはやその次の変化が起きています。10,000字のテキストも生成AIであっという間に作れるようになりました。それっぽいコンテンツを手軽に作るなら無敵です。

それによって「書ける会社になる理由」が激減したかというとぼくはそう思いません。書けるとは表層的な事象です。本質的には「自社のバリュー」を発見し、仮説を立て、検証できるコンテンツメーカーになり得ているかということです。生成AIの一般化が急速に進む時代だからこそ、編集者の視点を持つ企業かどうかは大きな分岐点になるはずです。インハウスエディターのような職務は今後普及するでしょうし、それを支援する会社も一般化するだろうと思っています。内製化するにせよ支援会社を活用するにせよ、コンテンツの文化を自分たちで創造し、醸成できないとこの先は手も足も出なくなる。そんな風に思っています。

一朝一夕でいかないテーマだからこそ、「自分たちで書く」という一見地味な取り組みにぼくは大きな意味を見出しています。

最後に

長くおつきあいいただきありがとうございました。一方的に自論を書き連ねるコラムは以上です。「書くスキルの必要性はわかる。でもできない」とお悩みの中小企業様のお役に立てば嬉しいです。すでに「書ける」企業の皆様にはそぐわない内容ですのでご容赦ください。

巷にあるのは書けることを前提にしたコンテンツばかりで、書けない企業向けの解説がないなあ…でも一番困っているのはその人たちだよなあ…と思って生まれたコンテンツです。どこかの誰かのお役に立ったら幸いです。

 

執筆者:JBN 稲田

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