【コラム4】Webに「地方」はあるのか(後編)
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こちらコラムの続きになります。Webに「地方」はあるのか(前編)
20年ほど前には、例えばホームページを立ち上げるなどしてWeb上になにか対策さえすれば、現在のリアルな業績にその分だけ上乗せされるので得、といった考え方をする人が少なからず存在しました。
それが幻想であることは、実体験としても多くの人によって確認されてきましたし、そもそもインターネットの普及前と後で市場規模が同じならその考え方が理論的におかしいことは言うまでもありません。しかしそれでも感覚的にはWebに何かを期待したい気持ちや、それでリターンの実感がないためにがっかりしてしまう、その心情がわからなくもありません。
ただ、ビジネスにおいて「何かを期待する」とは、それに見合う「何かのアクション」があり、そのリターンとして何かを得る期待をするということです。冷静に考えればホームページを構築しただけでは、その時点ではまだそれはアクションでも何でもないので、それを「期待」に結びつけてしまうのは間違いなのですが、そういったケースは地方の会社にとても多いというのが、地方で長く仕事をしてきた私の印象です。つまり先にあげた20年前のイメージが完全には払拭されていない姿がそこにあります。
さて私たちはよく「Webマーケティング」という言葉を使います。「マーケティング」というと、何か数値を含んだ難解で戦略的な話が始まるのではないかと警戒されるかもしれませんが、ここでは簡単に考えてみましょう。 マーケティングとは自社や自社の商品がどれだけの人の役に立つかを測り、その対象となる人たちとどのようにコミュニケーションをとって繋がり、関係性を維持していくのかという一連の動きです。
企業規模の大小を問わず、また中央か地方かにかかわらず「顧客や潜在顧客との関係を作り維持するためのコミュニケーション」などは、まっとうな企業なら言われなくても日常的にやっていることで、特別なことでもなんでもありません。地方ではマーケティング部門のある会社はごく少数ですし、「マーケティング」という言葉が社内で流通していない会社も多いでしょうが、だからといってマーケティング活動をまったくしていないといったことがあるでしょうか。商売をする以上、毎日真剣に状況を観察し、いろいろなことを考え、商品開発や販売促進に反映させているはずです。人により組織により優劣はあるとしても、意識しなくてもマーケティングはされており、だからこそそのサービスは成り立ってきたはずです。
ただしこれは「リアル」な世界での話です。
私たちがWebマーケティングと、あえて「Web」を頭につけて区別するのは、リアルの世界でのそれと手法がまるで異なるだけでなく、無視できない考え方であるからです。リアルな世界でもマーケティング活動には様々なものがありますが、その中にはスタッフや経営者など「人」が媒体となって情報を収集したり発信したりする場合もあります。むしろそれをアイデンティティとしている企業も少なくなく、リアルな世界においてそれで成り立っているのであれば問題ありません。
しかし、今後Webに何かを期待しようという場合、そういった有機的な活動はWeb上では不可能なので必然的に今までとは違う考え方で「アクション」を起こさなければなりません。顧客や潜在顧客とつながる何らかのツール(媒体)を使ったり、Webサイトに何らかの意図を含んだ機能やコンテンツを展開するとかがそれに当たるでしょう。そしてそれらは全体として矛盾なく設計されている必要があります。
この記事のタイトルで察していただいているとおり、本稿はどちらかというと地方の企業に向けたメッセージになっています。なぜならば、Webサイトを構築したらそれを活かすための何らかにアクションが必要だということについて、理解してもらえないことが地方企業の場合とても多いからです。
一方で、中央に本社を置く企業はさほどの抵抗なくリアルとWebの間にある壁を乗り越えてしまう印象があります(もちろんそうでない場合もありますが)。企業規模の大小を問わす、おそらく中央に位置しているために最初から視野が広く(全国区)、顧客との距離は遠く、face to faceの関係が難しい、などという状況がそうさせているのではないかと推測していますがどうでしょうか。地方の企業は多くの場合その逆の環境で経営してきたので、リアルとWebの間でもがいているケースが多いのだというのが私の感想です。
Webに何かを期待するのであれば、少なくとも何らかの新しいアクションの必要性について改めて深く考えてみることをお勧めします。
執筆者:JBN塚原