セミナーレポート|高付加価値商材が問い合わせをもらうには?

目次
本レポートは2025年5月28日に開催されたセミナー 「高付加価値商材が問い合わせをもらうには?WebサイトとCRMで実現する“伝わる設計”と“出会う仕組み”」の内容をまとめたものです。
「自社のサービスには自信があるが、Webサイトでうまく伝えられない」
「コンテンツを発信しているのに反応がなく、届いている実感が持てない」
こうした悩みを抱える企業に向けて、WebサイトとCRM(顧客関係管理)の連携により「価値が “伝わり”」「顧客と “出会える”」ための仕組みと実践方法を解説しました。
高付加価値商材を扱う企業の悩み
高付加価値商材を扱う企業の担当者の方には、Webに関するこんなお悩みがあります
マーケティング・広報担当者の悩み
- 自社のサービスは本当に良いはずなのに、Webサイトでどう伝えたらいいかわからない
- サイトやコンテンツはあるけれど、反応がない、届いている実感がない
- リードは取れても、営業からは“質が悪い”と返されてしまう
- CRMを導入しても成果が見えず、活用しきれていない
こうした悩みの背景には、「伝えたい価値が正しく伝わっていない」「出会いたい顧客とつながれていない」という根本的な問題があります。
高付加価値商材がWebで伝わりづらい構造的な理由
Webサイトの「受け手依存」という特性
Webサイトは情報を得る側の理解力や前提知識に大きく依存するメディアです。
- 企業がどれだけ丁寧に説明してもユーザーに前提知識がなければ価値は届かない
- スペックや価格など横並びの情報は伝えやすいが複雑な価値は伝えづらい
- 顧客自身が課題を自覚し、言語化できていないと検索キーワードにならず情報が届かない
- Webサイトはすべてのユーザーに同じ情報が提示される一斉発信の場である
高付加価値商材ならではの「長期的な検討と多様な視点での判断」
高付加価値商材の場合、Web活用においても下記の課題を踏まえる必要があります。
- 既存のカテゴリーに当てはまらない新しい価値を持つことが多く、顧客がその価値を表す言葉を持っていないと検索されにくい
- スペックや価格だけでは語りきれないため、相手の状況や課題感に応じたすり合わせや補足説明が必要で、一度では伝わらず長期的なアプローチやコミュニケーションが求められる
- 価格が高く、影響範囲も大きいため、「今すぐ買う人」が少なく、購入タイミングが企業ごとに異なるため、長期的なアプローチが必要
- 複数の関与者(現場、管理職、経営層など)が存在し、それぞれが重視する視点が異なるため、一人に伝わっても購買意思決定に至らないケースが少なくない
「伝わる設計」と「出会う仕組み」をWebサイトとCRMで実現する
この構造的ミスマッチを埋め、高付加価値商材で成果を出すためには、「誰に」「どんな場面で」「どんな情報を届けるか」という情報設計の土台を整えるための「伝わる設計」と、検討期間が長い中で企業側から必要な情報を、適切なタイミングで届けるためのCRMを活用した接点づくり「出会う仕組み」が必要です。
この2つがWebサイトが本当に機能し、問い合わせや商談といった成果につながる状態が実現します。
伝わる設計
顧客に「自分ごと」として受け取られる情報設計
Webサイトは “受け手に依存” するメディアなので「どうすれば伝わるか」を顧客の立場に立って設計する必要があります。
- ペルソナの明確化
届けたい相手を絞り込む - ジャーニーの設計
顧客がどの段階でどんな課題に直面し、それを解決するためにどんな情報やコンテンツが必要か。認知、検討、決定の3段階で整理する - ジャーニーに応じたコンテンツの用意
各フェーズで必要となる情報をあらかじめ用意しておく。それにより顧客が今知りたいことにフィットした情報提供が可能になる
出会う仕組み
企業側から能動的に接点を作る
高付加価値商材において、一度の接点で価値を伝えきるのは難しいです。適切なタイミングで何度でも企業側から情報を届けられる仕組みが必要です。CRM(顧客関係管理)を活用した接点作りによって実現します。
- 顧客データをCRMで記録・蓄積し、関係の履歴を見える化する
Web上での行動履歴や問い合わせ履歴などをCRMに蓄積し、顧客の関心や過去の接点を把握します。 - 顧客の行動から検討状況を察知できるデータを設計・取得する
導入事例の閲覧や資料ダウンロードなど、見込み度合の高い顧客が起こす行動を定義し、データとして取得できるようにします。これにより、出会いのきっかけを逃さず、企業側からアクションを起こすための重要な設計が可能になります。 - 顧客の関心とタイミングに応じて最適な情報を届ける
顧客にとって関心の高いテーマを最適なタイミングで届けられるようにします。継続的な接点と適切なアプローチが高付加価値商材では鍵となります。
CRMを活用することで、顧客の状況を察知し、受け手依存のWebで顧客を待つだけでなく、企業主導の能動的な活動へと転換できるようになります。
CRMの役割
CRMは単なる受注後の顧客管理ツールではありません。受注前の段階から顧客の行動や情報を記録・管理する仕組みであり、顧客情報データベースとして名前や連絡先に加えて過去のやり取り、閲覧したコンテンツ、商談履歴など、顧客との関係を築くための全てのアクションを記録します。これにより、パーソナライズされたコミュニケーションが可能になります。
企業事例
事例1 「伝わる設計」によって「出会いたい相手」から問い合わせが生まれた事例
本事例は、北辰不動産グループ様のビルオーナー向けのコンテンツメディア「C+ONE」の事例です。
不動産の資産価値を最大化するために設計面と管理面の両方からトータルで価値をつくるといういわば “ビルのプロフェッショナル” としてのサービスを提供しています。
課題・背景
- コンテンツは豊富だったが、「誰に何を届けるか」が整理されていない
- サイト経由の問い合わせの多くが、狙いたい「ビルオーナー」ではなく、マッチングしないターゲット外のユーザーだった
- Webサイト上の問い合わせフォームや資料ダウンロードへの導線が不明確だった
実施したこと:伝わる設計の改善
ペルソナ設計の見直し
複数の候補から「2代目としてビルを引き継いだビルオーナー」を最も重要なペルソナとして設定。彼らが「誰に選ばれたいか」「どんな状態の人か」を深く掘り下げました。
ジャーニー設計
ペルソナが抱える課題を「課題の認知」「解決策の検討」「決定・行動」の3つのステージに分けて整理。各ステージで必要となる情報や行動を明確化しました。
メディアコンセプトの定義
「あなたのビルにプラスの価値を。」をコンセプトとし、ビルオーナーに実用的な情報を届けるメディアとしての立ち位置を明確化しました。
コンテンツ設計・Webサイト構造設計
ペルソナに必要な情報が網羅されるサイト構造を設計。「ビルを守る」と「ビルを高める」という2軸でコンテンツを構成し、課題解決と価値向上にアプローチ。メルマガ登録、資料ダウンロード、Web面談などのCTAを設置し、顧客データ取得の導線を整備しました。
メディアのデザイン設計
ビルオーナー向けメディアとしてのデザインを設計し、信頼性や専門性を高めました。
成果
- サイトリニューアルから2ヶ月で、狙っていたペルソナからの具体的な問い合わせを獲得
- 問い合わせは単なる問い合わせではなく、事業貢献に直結するマッチング精度の高い具体的な相談内容
- 既存コンテンツを活用しながら、「誰に」「どう伝えるか」を設計し直したことで、これまで届いていなかったコンテンツの価値が届けられるようになった
事例2 メールとウェビナーの施策とCRMで案件化。継続的な接触で信頼関係を構築
本事例はプラスチック射出成形機の取り出しロボットおよび周辺機器の総合メーカーである株式会社ハーモ様の事例です。
課題・背景
- 営業の勝ちパターンとしてドアノック製品をきっかけにメイン商材のロボット販売へつなげている
- サイト訪問や資料DLなど関心を持っているが、問い合わせには至らない層が多く存在していた
- 休眠客・既存客のリストはあるものの再接点の仕組みがなく、活用できていなかった
- 予算化されるタイミングで想起されないと機会損失になる
検討期間が長いBotB商材のため、検討の途中で顧客とつながり続ける仕組みが必要でした。
実施したこと
- 顧客課題を軸としたセミナー企画
毎月、ユーザー共通の課題(人手不足、コスト削減、CO2削減など)に焦点を当てたセミナーを開催。 - セミナー開催までのコミュニケーション設計
セミナーを軸に、CRMを活用して継続的なコミュニケーションを設計。セミナー当日の資料案内まで、複数回にわたるメール配信を計画。 - セミナー内容に関するブログ記事の制作
セミナーテーマに関連する背景知識や製品情報を事前に届けるためのコンテンツを作成。 - CRMを活用した段階的なメール配信
顧客の行動や関心に合わせて、適切なタイミングでメールやコンテンツを届ける仕組みを構
成果
- 累計のセミナー参加者が年間500人程度のペースで増加
- サイト全体のセッション数も右肩上がりで増加
- メール経由で目的だったドアノック製品への問い合わせを獲得し、案件化に寄与
事例3:「出会う仕組み」の設計で企業主導の接点作りを実現
本事例は法人向けオフィス仲介企業の事例です。オフィスを通じた企業ブランディングや組織文化育成をコンセプトに、オフィス選びから設計、ブランディング支援まで幅広く提供しています。
課題・背景
- ウェビナー(月10回以上)、コラム(月15本更新)、メール(週1回)など、活発なマーケティング活動を実施
- 反応があったすべての顧客にインサイドセールスが架電。リソースを多く消費する割に成果の割合が低い
- マーケティング活動と営業活動のデータ連携が取れていない状況
実施したこと
マーケティングにおけるCRM活用フローの全体像を設計
マーケティングから営業までの顧客データの流れと、それを受ける社内担当者のアクション(人の動き)を統合したCRMの全体フローを設計しました。
CRM活用フローを実現するための4つのステップの実施
フォームの項目を最適化する
顧客情報を取得する上で重要な接点であるフォームについてリード判定に必要な情報をどこで取得すべきかを見直し、フォーム項目を再設計しました。
各ツールと企業情報のデータベースの連携でCRMの土台を作る
ウェブサイトでの行動データ、ウェビナーデータ、営業管理データなど、顧客に関わる様々なデータをCRMに統合しました。
統合した顧客データをもとに判定基準を策定
CRMに統合されたデータからインサイドセールスや営業が誰をフォローし、どんな行動を取るべきかの判定基準を策定しました。
データから見込み客を判定し、能動的なマーケティング・営業活動につなげる
顧客の行動データと属性情報を組み合わせて顧客を「ホットな顧客」「追わない顧客」などと判定し、その後の具体的な活動(例:すぐに営業にパスする、ISで架電する、マーケティングメールを継続するなど)をシナリオとして複数検討しました。
また、営業担当者が動き出しやすいように、営業専用の顧客リスト画面の作成や、通知設定を行うことで、活動しやすい環境を整備しました。
成果
- 営業がWebサイトからの問い合わせを待つのではなく、企業側から能動的に働きかけが可能になった
- リードを効率的にフォローし、質と効率の両面で成果を向上させることができるようになった
まとめ
高付加価値商材を扱う上で重要なのは、Webサイトの「受け手依存」という特性と、商材の「長期検討・一度では伝わりづらい」特性を理解し「伝わる設計」と「出会う仕組み」を連携させることです。
- 「誰に」「いつ」「何を」伝えるかを設計し、顧客にとって「自分ごと」として受け取られる情報設計を行う
- CRMで顧客の検討状況を把握し、最適なタイミングで情報を届け、関係を深めていく
- 顧客との接点において、企業側からアプローチすることを前提としたCRMの活用フローを設計する
セミナー内でいただいたご質問への回答
マーケがHubSpotを利用していて、セールスメンバーが画面に見慣れていない。メール通知だと埋もれてしまう。スムーズなパスをする方法は?
セールスメンバーがマーケティングの意図や戦略を理解できていないことが原因かもしれません。
まず、どんなデータを取得し、どのような基準で顧客を判定し、どう動くのかを関係者間で共有し、目線を合わせることが重要です。戦略上の意図を理解すれば、HubSpotの画面やデータ、通知にも興味を持つようになるでしょう。
メール通知が埋もれる場合は、HubSpotのタスク割り当て機能やSlack連携機能の活用も有効です。営業担当者が受け取りやすい方法を考えることも大切ですが、根本的には営業担当者を巻き込み、「自分の仕事」として意識してもらうことが出発点です。
「伝わる設計」と「出会う仕組み」は両方整えないとダメなのか?
両方が整っているのが理想的ですが、「伝わる設計」だけでも一定の成果は期待できます。
課題感が明確で、それに応えるコンテンツがWebサイトにきちんとあれば、ユーザーが訪問し、成果に繋がることはあります。特に、競合が多い中で業界の第一線にいる企業だからこそ出せる一次情報やオリジナリティのあるコンテンツは、信頼性を高め、「伝わる設計」だけでも強いWebサイトになります。
一方で、「出会う仕組み」だけではうまくいきにくいです。まずは「伝わる設計」で土台を作り、その上で能動的・戦略的な活動を目指す場合に「出会う仕組み」を構築していくのが良いでしょう。
(事例1について)リニューアルから2ヶ月で問い合わせに繋がったが、その間に何か追加施策を行ったのか?公開後、何もしていなくても問い合わせが来るようになったのか?
Webサイトを公開した時点で「伝わる設計」が良くできていたため、特別な追加施策を行わなくても自然と問い合わせに繋がりました。やはり「誰に何を届けるか」をきちんと整理し、顧客のニーズに沿ったコンテンツを最初に用意しておくことが重要です。
多くの企業がこの部分を曖昧にし、企業側の都合の良い情報発信をしてしまうことで、顧客とのズレが生じてしまいます。
ペルソナやジャーニーは整理し、CRMも活用しているのに事例のような成果に繋がっていない。何がポイントか?
ペルソナやジャーニーを策定しただけでは成果には直結しません。そこからさらに、メディア全体のコンセプト、それを体現するデザイン、そして専門性の高い信頼できるコンテンツへとブレイクダウンしていくことが重要です。
各事例のプロジェクトはどのくらいの期間で実施したのか?
- 最初の2ヶ月で「設計」(ヒアリングと全体設計)
- 次の2ヶ月で「制作」(コンテンツとデザインの決定)
- 最後の2ヶ月で「実装」(HubSpotを使ったサイト構築やフォーム設計など)
「戦略設計」「制作」「実装」という流れで、約2ヶ月単位で進めるのが一般的なプロジェクト期間と考えられます。
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