【コラム5】「消費者」という人はいない(前編)

【コラム5】「消費者」という人はいない(前編)
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まずは、糸井重里さんが書いた「インターネット的」という本の一部を引用いたします。

「たとえば『源氏物語』のなかに描かれている、人が人に対して抱くさまざまな感情。それはいまの人たちが抱える悩みや情熱とまったく同じものだと思います。好きだという気持ちを伝える手段は、手紙からメールやLINEに変わってるかもしれないけれど、どうしようもなく人を突き動かす感情みたいなものは、『源氏物語』に書いてあることと何も変わらない。
だから、インターネットが登場しても、人は変わらない。それを僕は当たり前のことだと思っていました。」

この本は20年以上経った今でも新刊が購入できて読み継がれていますが、発売から10年くらいして出版された文庫版には「続・インターネット的」という最終章が追加されています。その中に「インターネットで人は変わらない」というパラグラフがあり、この一文はその中から引きました。さらに、糸井さんはこの本の中で何度かこうも言っています。

「『消費者』という人はいません」

いずれも当たり前すぎるくらい当たり前のことが書かれているわけですが、糸井さんはインターネットを肯定的に捉えながらも、このメディアの中に人間不在で語られてしまいがちな特性があることを感じています。この辺りは、Webを企業活動に活用しようとする場合でも〝きも〟になる考え方なのですが、一方で見逃されたり軽視されたりしがちな要素でもあります。

ちなみに当社はお客様企業との打ち合わせがとても多い会社で、「だから儲からないんだ」とか「非効率だ」とかの意見を常にまといながら20年以上このスタイルを続けてきてしまいました。その理由はいろいろありますが、煎じつめていうとユーザーを人として理解し、それをお客様企業と共有していくには仕方がなかったのだ、というと言い訳に過ぎるでしょうか。

ところでマーケティング用語に「ペルソナ」とか「バイヤージャーニー」という言葉があります。このコラムを読んでいる皆さんの多くはこれらがどういうものかについては理解されていると思いますし、ネットでも書籍でもたくさん解説されてますのでここでは触れませんが、確認しておきたいのはこの二つの用語が、とりたてて重要なものとして扱われるようになったのはインターネットが普及して以降だということです。

Webマーケティングではユーザーデータを集めやすく、そのサンプル数も桁違いに多いので傾向を抽出したり理論構築をしやすいという特性があります。反面、消費者・ユーザーを人として認識する意識が希薄になってしまう側面があることは否めません。ユーザーとの直接の物理的接触がないわけですから当たり前です。
だからこそのペルソナやバイヤージャーニーなのですが、重要課題とはいえ私たちがこれをお客様企業と一緒に設定する作業は一筋縄ではいきません。当社においてもWebディレクターが特に深く悩んだり、先方との間で板挟みになって立ち往生したりしがちな難所です。この辺のお話しはまた次号といたしましょう。(次回に続く)

執筆者:JBN塚原

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